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高平均出力、波長拡張、高繰り返し化で広がるレーザー加工の可能性FAイベントレポート(1/2 ページ)

天田財団は、「OPIE'26」の併催イベントとして「2026年度 天田財団 助成研究成果発表会」を開催した。レーザープロセッシング分野と塑性加工分野の2分野で特別講演と助成研究成果発表が行われ、加工技術の新たな可能性が示された。本稿では、レーザープロセッシング分野の発表内容を紹介する。

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 天田財団は2026年4月22日、パシフィコ横浜で開催された「OPIE'26(OPTICS PHOTONICS International Exhibition 2026)」の併催イベントとして、「2026年度 天田財団 助成研究成果発表会」を開催した。同発表会は、同財団が助成した研究成果を産業界に広く紹介し、社会実装につなげることを目的とするものだ。レーザープロセッシング分野では、特別講演に加え、中赤外レーザーと超短パルスファイバーレーザーに関する助成研究成果が紹介された。

大阪大学で開発を進めるパワーレーザー

 レーザープロセッシング分野の特別講演では、大阪大学 教授の余語覚文氏が「高平均出力パワーレーザーへの挑戦:100J/100Hzモジュール SENJU」と題して講演した。

 「パワーレーザー」とは、一般に、大きなエネルギーを短時間に集中させるレーザー装置を指す。米国ローレンスリバモア国立研究所の国立点火施設(National Ignition Facility:NIF)はその代表例で、190本以上のレーザービームを一点に集光する巨大な装置を備える。同施設は2022年に世界で初めて核融合点火、すなわちレーザーで投入したエネルギーを上回る核融合エネルギーの生成に成功したことでも知られる。

 一方で、既存のパワーレーザーには課題もある。1ショット当たりのエネルギーは大きいものの、照射できる頻度が低いことだ。

 これは熱の除去などに時間がかかるためで、大阪大学の大型レーザー装置「激光XII号」も、10kJ級のエネルギーを出せる一方、利用頻度は2時間に1回程度にとどまるという。電気効率も0.1%以下で、投入した電力をレーザー光に変換する効率にも改善の余地がある。

 そこで、大阪大学 レーザー科学研究所が開発を進めているのが、高平均出力パワーレーザー「SENJU(Super Energetic Joint Unit)」である。

 SENJUは、100J級の高エネルギーパルスを100Hzで繰り返し発生させることを目指す次世代のパワーレーザーだ。余語氏は「SENJUでは、利用頻度を1秒間に10回から100回にまで高めたい。電気効率についても、数%、できれば10%程度まで持っていきたい。核融合でエネルギー利得が10倍、20倍、30倍となれば、消費した電力を上回るエネルギーを得られる可能性がある。その意味でも、利用頻度と電気効率は非常に重要となる」と述べた。

カギを握る、Yb:YAGと半導体レーザー

 高繰り返し化と高効率化を実現する鍵となるのが、利得媒質と励起光源の刷新である。

 これまで大型パワーレーザーでは、利得媒質にネオジムを添加したリン酸系ガラス、励起光源にフラッシュランプが用いられてきた。しかし、ガラス媒質は熱伝導率が低く、ショット後に発生した熱を取り除くのに時間がかかる。また、フラッシュランプは広い波長の光を発するが、レーザー励起に使える波長は一部に限られる。

 SENJUでは、利得媒質としてYAGにイッテルビウム(Yb)を添加した透明セラミックス「Yb:YAG」を採用し、励起光源には半導体レーザーを用いる。半導体レーザーは、レーザー媒質の励起に必要な波長を狙って出せるため、フラッシュランプに比べて効率を高めやすい。さらに、同セラミックスを低温冷却することで熱伝導率を高め、高繰り返し動作に必要な除熱性能を確保する。

 余語氏は、透明セラミックスと半導体レーザーの双方を国内企業が手掛けられる点に触れ、「この2つを国内でそろえられる国は、先進国でもなかなかない。このことは日本の強みだ」と強調した。

 加えて、SENJUで採用しているのが、「低温冷却Yb:YAGアクティブミラー方式」である。アクティブミラーは、レーザー媒質を反射ミラーとしても機能させながら、光を増幅する構造だ。通常のミラーでは光の反射時にエネルギーがわずかに失われるが、アクティブミラーでは反射のたびに光が増幅される。

 SENJUでは、このアクティブミラーの背面を固体のヒートシンクと密着させ、固体間熱伝導によって熱を逃がす。ガス冷却ではなく固体を介して熱を逃がすことで、除熱性能を高める考えだ。

CPS構築も視野、2026年度に目標実現へ

 ただし、レーザー媒質であるセラミックスと、熱を逃がす金属材料では熱膨張の特性が異なる。単純に接合して冷却すれば、収縮差によって波面がゆがんだり、媒質が損傷したりする恐れがある。そこでSENJUでは、YAGと熱膨張特性が近いモリブデンなどを用い、冷却時のゆがみを抑えながら固体間熱伝導を成立させる構造を採用している。

 SENJUの応用先としては、レーザー加速器や宇宙デブリの探査/除去、レーザー核融合などが想定されている。

 高繰り返し化は、データ駆動型の研究にもつながる。従来のように数時間に1回しか照射できないレーザーでは、機械学習に必要な大量の実験データを得ることは難しい。これに対し、1秒間に数十回から100回の繰り返しで照射できれば、短時間で多数のデータを取得できる。実験結果を自動計測し、その結果を基に次の照射条件を推論し、レーザー制御へ反映するサイバーフィジカルシステムの構築も視野に入るという。

 開発は段階的に進められており、10J/100Hzの「SENJU lite」で平均出力1kW級の動作を実現した上で、100J/100Hzへの拡張を目指す。余語氏は「国内企業のコア技術に、阪大の独自技術であるアクティブミラーを組み合わせて、2026年度前半に何とか100J/100Hzの実現を目指したい」と今後の展望を語った。

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