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燃料電池セルの構成材料燃料電池と構成材料の基礎知識(2)(2/3 ページ)

本連載では、水素を燃料として発電する「燃料電池」について、基本事項から技術開発動向までを、技術系の方でなくても理解できるように解説していきます。第2回では、燃料電池のセルを構成する各材料について、基本的な事項を説明していきます。

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3.触媒

 膜の両面に形成された触媒層は、電子伝導性が高い炭素粉末(担体と呼ぶ)の表面に白金(Pt)のナノ粒子が担持された触媒(Pt/Cと表記)と、電解質膜と同様の組成をもつ電解質(ionomer:イオノマーまたはアイオノマーと呼ぶ)の混合物で構成されています。

 触媒層の厚さは条件によって変わりますが、特にカソードでは酸素の拡散を向上させるために、触媒層を薄くすることが求められます。例えばトヨタの第2世代MIRAIでは、カソード触媒層の厚さの実測値が9.1μmとなっています【参考資料2】。

 図4には膜と触媒層の接合部の拡大図を示しています。燃料電池の開発当初は、イオノマーを含まない触媒層だったため、膜と接しているPt/C粒子上のPt表面しか有効に利用されませんでした。その後、イオノマーを触媒層に混合することでプロトンが膜から触媒層内部のPt表面へ届くようになり、セルの発電性能が大きく向上しました。

 触媒の構成や担体の役割、触媒の活性その他については次回に詳しく解説します。

図4 固体高分子膜と触媒層の接合部の拡大図
図4 固体高分子膜と触媒層の接合部の拡大図[クリックで拡大]

4.拡散層

 図5には、ガス拡散層の代表的な製品の1つとして、SGL CarbonのGDL「SIGRACET」の写真を示しています【参考資料5】。図1にも示した通り、GDLの基材には炭素繊維で作製されたカーボンペーパーが一般的に使われます。「ペーパー」と呼ばれるように厚さは紙のように非常に薄く(0.2〜0.4mm程度)、繊維間に多数の間隙がある多孔質材料です。

 拡散層に要求される性能で最も重要な事項はガス拡散性です。一般的に電解質膜を加湿するために供給ガスは加湿されてセルに導入され、さらにカソードでは水が生成されます。水が拡散層に滞留するとガスの拡散が阻害され、反応に必要な酸素が十分に供給されなくなり、出力が低下してしまいます。生成水が速やかに排出されるように、拡散層にはPTFEのような撥水材を添加しています。ただし、撥水化が過度になると膜の加湿を阻害する可能性があるため、撥水性の最適化が必要です。

 触媒層と接する側の基材表面には、炭素粉末を主成分とするマイクロポーラス層(MPL)を付与することが一般的になっています。MPL中に添加されたPTFEは、撥水性の発現だけでなく、炭素粒子同士をつなげるバインダーとしても機能しています。

 MPLを付与することの効果は主に次の2点です。

(1)カーボンペーパーと触媒層の密着性の向上(接触抵抗の低減)。

(2)触媒層近傍の水管理の改善(特に排水性の向上)。

 この他にSGLは、炭素繊維による膜の穿孔防止を挙げています【参考資料5】。

 MPLのもともとの目的は(1)が主だったようですが、結果的に(2)の効果も高まることから【参考資料6】、MPL付拡散層が一般的になってきています。MPLはカーボンペーパーよりも小さな細孔を有しており、触媒層の水を毛管現象(細孔に水が引き込まれる現象)で効率よく排出します。大学/研究機関などでは、MPLの作用機構や構造の最適化などについて研究が行われてきており、さまざまな論文が発表されています。

 SIGRACETの場合は、基材に5wt%、MPLに20〜25wt%のPTFEが添加されていて、代表的な製品の全体の厚さは215μmおよび280μmとなっています【参考資料5】。日本国内では、東レがカーボンペーパーおよびGDLを製造/販売しています。GDLの全体の構造についての公開情報はありませんが、厚さが152μmと168μmの2種類が提供されています【参考資料7】。

 拡散層には高い電子伝導性も求められます。上記のように、現状では炭素ベースの材料で構成されています。これは、電子伝導性が高いことに加えて、PEFC内部が酸性環境になるため、耐腐食性も考慮する必要があるためです。材質にもよりますが、一般的な金属系の多孔質材料はPEFCに適用しにくいと考えられます。

 ただし炭素材料も腐食しないわけではなく、高電位下では腐食(酸化反応による消失)が起こります。これについては今後の連載の中で触れていきます。

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