ギガキャストを発案したテスラの現在・過去・未来:いまさら聞けないギガキャスト入門(5)(6/7 ページ)
自動車の車体を一体成形する技術である「ギガキャスト」ついて解説する本連載。第5回からは、ギガキャストを発案したテスラの取り組みを紹介する。今回は、テスラという会社について着目し、その歴史やクルマの開発状況、工場の展開などについて見てみる。
9)ギガファクトリー上海
2019年1月7日、テスラは上海市臨港産業区で新たなギガファクトリー(ギガファクトリー上海)の建設開始を発表した(図9)。中国企業との合弁を行わない外資単独の自動車工場の第1号で、新工場の最大生産能力は50万台で、モデル3とモデルYを生産する。総投資額は500億元(約8000億円)に上る。
- 建設開始:2019年1月(または初旬)に着工
- 生産開始:2019年10月から生産開始。同年12月に最初の車両を出荷
- 特徴:中国において外資単独で建設された初の乗用車工場。モデル3、モデルYを生産し、年間75万台以上の生産能力を備える
2019年4月22日、NVIDIAから供給されていた自動運転用の半導体を、自社設計の半導体に切り替えたと発表。
同年12月30日には、ギガファクトリー上海でモデル3の出荷がスタートし、初日は15台が出荷された。最終的には年間50万台のEVを生産する能力を持つことになる。
10)モデルY
テスラは2019年3月、モデル3をベースにした中型クロスオーバーSUV「モデルY」を発表した(図10)。モデルYは、外形寸法が全長4760×全幅1925×全高1625mm、車両重量が1930〜2000kg。5人/7人乗りの構成で、シングルモーターの後輪駆動またはデュアルモーターの全輪駆動レイアウトを用意している。
モデルYは、以下のような特徴がある。
- 高級SUVであるモデルYよりも手頃な価格になるように設計
- デザインは、流麗なルーフラインと厚みのあるボディーパネルを有するクーペフォルム
- 内装は、環境に配慮して、動物性素材を使用しないヴィーガンレザー素材を使用し、インパネ中央に15インチのタッチスクリーンでシンプルにナビゲーションなどのインフォテインメント機能や車両設定を操作可能
- 後輪駆動モデルでは、スタンダードレンジのバッテリーを搭載。デュアルモーターAWD仕様では、ロングレンジのバッテリーを搭載。強力な加速と長距離の航続が可能
モデルYのプロトタイプは2019年3月に初めて公開され、納車は2020年3月に開始した。なお、テスラの2020年の世界車両販売台数は前年比35.8%増の49万9550台となり、2021年には100万台の大台を突破した。
なお、モデルYのリアアンダーボディーとフロントアンダーボディーはギガキャストによって製造された。モデル3では同じ箇所の部品点数は171あったが、これらをわずか2つに減らすことに成功した。
2019年5月16日、テスラはMaxwell Technologiesの買収完了を発表した。同社は45年以上に渡りエネルギー貯蔵と電力供給ソリューションの開発、製造およびマーケティングを展開してきた企業。蓄電技術の一種であるスーパーキャパシター(ウルトラキャパシター)の開発などを手掛けている。
2019年7月〜2020年6月まで、テスラは初めて4四半期連続の黒字を報告し、S&P500の構成銘柄リストへの組み入れ資格を得た。2020年には株価が740%上昇し、時価総額が最も大きい自動車メーカーとなった。2〜10位まで9社の自動車メーカーの時価総額合計を上回るほどで、米国で6番目に価値のある企業となった。そして2020年12月21日、S&P500のリストに追加された。
11)サイバートラック
テスラは2019年11月21日、全電動ピックアップトラック「サイバートラック」を発表した(図11)。シングルモーターRWD(3万9900ドル)、デュアルモーターAWD(4万9900ドル)、トライモーターAWD(6万9900ドル)の3種類が用意された。
サイバートラックの主な特徴は、ステンレススチール製の外装骨格、ステアバイワイヤと後輪操舵、高強度ガラス、エアサスペンションによる車高調整、そして強力なけん引能力である。これらの特徴が、高い耐久性、スポーツカーのような操縦性、そして多様な路面状況への対応力を実現している。
- デザインとボディー構造
- 1)ステンレス鋼のボディー:
外骨格構造を採用し、非常に頑丈で耐久性が高い - 2)独特なデザイン:
直線的でエッジが際立つ、SF映画のような外観 - 3)アーマーガラス:
鉄球が当たっても割れないとされる強靭(きょうじん)なガラスを採用
- 1)ステンレス鋼のボディー:
- 走行性能
- 1)ステアバイワイヤ:
ステアリングシャフトがなく、電気信号で操舵する世界初のシステムを搭載 - 2)後輪操舵システム:
大きな車体でも小回りが利き、スポーツカーのようなハンドリングを実現 - 3)高い加速性能:
最上位モデルに搭載される「ビーストモード」は、時速0〜100kmの加速時間が2.7秒という驚異的な加速力
- 1)ステアバイワイヤ:
- 実用性とユーティリティー
- 1)荷台の機能性:
スイッチで開閉可能な荷台には、LEDライトや仕切り用の金具があり、二重底のスペースも備える - 2)給電機能:
120/240Vのコンセントを備え、他のEVや住宅への給電が可能 - 3)オプションパーツ:
ルーフに取り付けられるライトバーや、荷台の追加バッテリー、専用テントなど、アクティブな用途を想定したユニークなオプションがある
- 1)荷台の機能性:
- その他の特徴
- 1)デジタルミラー:
カメラ映像をミラーに表示するデジタルミラーを採用し、視認性を高めている - 2)日本の道路での課題:
非常に大型な車体のため、日本の一般的な立体駐車場での利用や、路上での駐車が困難な可能性がある
- 1)デジタルミラー:
12)ギガファクトリーベルリン−ブランデンブルク
2019年11月12日、テスラはドイツのギガファクトリーベルリン−ブランデンブルクの立地を正式に発表した(図12、図13)。
- 発表:2019年11月12日、正式に立地を発表
- 建設開始:2020年5月ごろに着工。前段階では2020年2月に環境クリアランスの承認などの準備が進行
- 生産開始:2022年3月22日に正式に稼働開始
- 特徴:バッテリー、バッテリーパック、パワートレインの製造とモデルYの組み立てを行う。プレハブ構造を活用した工期短縮が特徴的
2022年3月、図14に示すように、テスラのギガプレスのサプライヤーであるIDRAグループは、同社初の9000トンダイカストマシンのティーザーを公開した。また、同社のLinkedInのページにその写真を掲載し、その前に立つ従業員と合わせてその圧倒的なスケールを披露した。従業員の身長を約1.8mすると、機械の高さは約7.6mと推定される。
IDRAグループは9000トンギガプレスの受注先を明らかにしていないが、テスラ向けである可能性が高い。同社は2021年、8000トンギガプレスを「新エネルギー車のリーディングカンパニー」から受注したと発表している。
8000トンギガプレスはサイバートラックの鋳造品の生産に使用される見られていたため、9000トンギガプレスはテスラがサイバートラックの仕様を更新して当初考えていたよりも大きな機械を必要としたか、あるいは何か別のことを計画している可能性がある。例えば、テスラ セミの製造や1回の鋳造で車両全体を製造するといった用途が想定される。
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