ギガキャストを発案したテスラの現在・過去・未来:いまさら聞けないギガキャスト入門(5)(5/7 ページ)
自動車の車体を一体成形する技術である「ギガキャスト」ついて解説する本連載。第5回からは、ギガキャストを発案したテスラの取り組みを紹介する。今回は、テスラという会社について着目し、その歴史やクルマの開発状況、工場の展開などについて見てみる。
5)ギガファクトリーネバダ
2014年9月4日、テスラはパナソニックと建設を計画していた大規模リチウムイオン電池工場である「ギガファクトリー」を米国のネバダ州に建設すると発表した。
- 建設開始:2014年6月にネバダ州スパークス郊外に着工
- 特徴:リチウムイオン電池、ドライブトレイン、パワーウォール、テスラ セミなどを製造。敷地は約3200エーカー(13km2)で、世界最大級の建造物の一つ。建設費は約50億ドル(パナソニックが16億ドル出資)
図5に、ギガファクトリーネバダの外観を示す。この工場は、電気モーター、バッテリー、パワートレインを生産しており、その生産量は世界最大規模である。モデルSなどに搭載されているリチウムイオン電池セルと、その電池セルを使った電池パックを大量生産している。2020年にはフル生産に入り、生産能力は電池パックで50GWh相当を目指すとしている。
6)ギガファクトリーニューヨーク
ギガファクトリーニューヨークは、2014年9月の建設開始(着工)で、2017年に完成し操業を開始した(図6)。もとはSolarCityの大型太陽電池工場であり、ニューヨーク州主導で整備された。工場の主な生産品は、太陽光パネルのソーラールーフ、スーパーチャージャー用の電装電気部品/コンポーネントである。また、テスラの車両を自動運転機能であるAutopilotのデータアノテーション部門もある。
テスラは2015年4月、パワーウォール(家庭用)とテスラパワーパック(ビジネス用)のバッテリーパックを発表し、エネルギー貯蔵市場に参入した。発表から1週間以内に8億ドル相当を受注している。
7)モデルX
テスラは2015年9月、3番目の車種「モデルX」を発表した(図7)。5〜7人乗りのミッドサイズ高級クロスオーバーSUVで、デュアルモーターまたはトライモーターの四輪駆動レイアウトを採用。後部座席のドアが地面に対して垂直方向に開閉する、可動式の「ファルコンウイング」デザインを採用した。
モデルXは、以下のような特徴がある。
- ファルコンウイングドアの採用。後部座席ドアが上方に跳ね上がるガルウィング式で、狭い場所でも乗降しやすい。センサーが搭載されており、周囲の状況を検知して開閉を調整する。立ったまま2列目/3列目シートに乗り込めるため、アクセス性が向上している
- 優れた走行性能と低重心を実現。床下に搭載されたバッテリーのおかげで重心が低く、機敏なレスポンスと安定した走りを提供する。AWD(全輪駆動)モデルでは、スーパーカー並みの時速0〜100kmの加速を実現した.
先進的な室内空間現。最大7人乗車が可能な広い車内空間を備える
#ほとんどの操作を可能にする大型のセンターディスプレイが設置されており、未来的でシンプルな内装デザイン
#広大なパノラミックガラスルーフは、頭上まで伸びることで解放感と抜群の視認性を実現している。
#自動運転支援機能とコネクティビティを実現。「オートパイロット」が全車標準装備され、同一車線内での自動運転支援を提供する。4G LTEを利用したソフトウェアアップデートにより、自動運転機能の追加や改善が可能。SIMカード内蔵でインターネットに常時接続され、モバイルアプリからの車両管理/操作もできる
#エンジンがないためボンネット下にラゲッジスペースがある。HEPAエアフィルターシステムが搭載されており、車内の空気をクリーンに保つことができる
モデルXのプロトタイプは2012年2月に初公開され、2015年9月に納車が開始された。モデルXはモデルSと約30%のコンポーネントを共有する。
8)モデル3
2016年4月に発表したのがモデル3だ(図8)。モデル3は、モデルSよりもコンパクトなサイズで、日本市場の機械式駐車場にも配慮された全幅が設定されたファストバックのボディスタイルと、デュアルモーターの全輪駆動レイアウトまたはリアモーターの後輪駆動レイアウトのいずれかを備えた中型車だ。
モデル3は、以下のような特徴がある。
- 高級セダンであるモデルSよりも手頃な3万ドル以下の価格になるように設計された
- 内装の操作はイグニッションボタンや物理的なスイッチがほとんどない15インチのタッチスクリーンで行う
- 安定性を高めるための電子制御システムを搭載して電気式スタビリティコントロールを実現
- モバイルアプリ、つまりスマートフォンとアプリを連携させることで車の解錠やエンジンスタートができるリモートアクセスが可能
- OTA(Over the Air)ソフトウェアアップデートによって、Wi-FiやLTE接続を通じて、ナビゲーションや運転支援機能などのソフトウェアアップデートがワイヤレスで行える
- パフォーマンスバッテリー搭載モデルは、優れた加速性能があり、スポーツカーに匹敵する加速力を実現
モデル3のプロトタイプは2016年に初めて公開された。テスラのこれまでの3車種よりも安価なため、1週間以内に32万5千件以上の有料予約を受注。生産をスピードアップしコストを抑えるため、テスラモーターズはモデル3の組み立てにロボット技術や自動化に多額の投資をしたが、ロボット技術はかえって車両の生産を遅らせた。これにより大幅な遅延と生産上の問題が発生し、同社はこの時期を「生産地獄」と表現した
2018年末までに生産上の問題は克服され、モデル3は2020年12月までに80万台以上が納入され、2018〜2021年に最も売れたEVとなった。
2016年8月1日、テスラはSolarCityの買収を発表した。SolarCityはマスク氏氏の従兄弟であるリンドン・リーブ氏とピーター・リーブ氏が率いる太陽光エネルギー企業だである(同年11月17日に両社の株主が買収を承認)。
テスラは、SolarCityとのシナジーにより最初の1年で削減できるコストは1.5億ドルとなると見込んでいた。また、ハードウェアのコストと設置コストを削減し、生産効率を上げて顧客獲得コストを削減するとした。
2017年1月31日、テスラモーターズはトヨタ自動車とEV分野で共同開発を行う業務提携契約を結ぶことを発表。また、テスラモーターズからテスラへの社名変更も行われた。2016年の年末にはWebサイトのURLが「teslamotors.com」から「tesla.com」に変更されており、「about」セクションの表記が、「単に自動車メーカーであるだけではなく、エネルギーのイノベーションの分野におけるメーカーでありテクノロジーとデザインの企業だ」に変更されていたという。
2017年7月28日、フリーモント工場からのモデル3の出荷を開始した。
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