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Synopsysがアルテミス計画を支援 宇宙服の帯電解析と月面通信をデジタルで検証CAEニュース

米Synopsysは、同社のソリューションが米国主導の国際月探査「アルテミス計画」における宇宙服の帯電解析と、月面セルラー通信システムの性能検証を支援していると発表した。

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 米Synopsysは2026年4月14日(米国時間)、同社のソリューションが米国主導の国際月探査「アルテミス計画」における宇宙服の帯電解析と、月面通信システムの開発を支援していると発表した。

 NASA(米航空宇宙局)は、月面環境における宇宙服の適合性を検証するため、SynopsysおよびElectro Magnetic Applications(以下、EMA)をパートナー企業に選定。今回の取り組みは、将来のアルテミス計画におけるSynopsysの継続的な支援を前進させるものであり、Bentley Systems傘下のCesiumおよびNASA グレン研究センター(Glenn Research Center)との連携による、デジタルツイン技術を活用した月面のセルラー通信システム性能を検証する取り組みも含まれるという。

模擬月面ミッションにおける宇宙服およびローバー搭載アンテナ性能の解析で、Synopsysの電磁界シミュレーションソリューションが活用されている
模擬月面ミッションにおける宇宙服およびローバー搭載アンテナ性能の解析で、Synopsysの電磁界シミュレーションソリューションが活用されている[クリックで拡大] 出所:Synopsys

アルテミス計画向け宇宙服の帯電解析を支援

 SynopsysとEMAの連携では、月面レゴリス(微細な砂状物質)による摩擦帯電や、宇宙プラズマ環境に伴う帯電/静電放電(ESD:Electrostatic Discharge)によって生じるリスクの低減を目的に、船外活動(EVA:Extravehicular Activity)システム、とりわけ宇宙服に焦点を当てている。

 多層構造のアルテミス計画向け宇宙服が月面で受ける帯電レベルを解析することは、ESDによる通信および生命維持に必要なミッションクリティカルな電子機器への影響を防ぐために重要であり、継続的な月面運用において欠かせない要素となる。

 両社は、計画されたアプローチの下、電磁的な帯電および放電を解析するソフトウェアシミュレーションツール「Ansys Charge Plus」を用いた物理ベースの解析ワークフローを適用/開発し、宇宙服材料や積層構造、ならびに代表的な宇宙服構成要素を関連する月面プラズマ条件下で評価する。

 これらの取り組みは、EMAの宇宙環境/放射線影響(Space Environment and Radiation Effects)研究所において実施される試験および検証活動と組み合わされている。同施設は、地上において宇宙プラズマ環境の主要な特性を再現可能な数少ない設備の1つだという。このシミュレーションと試験を統合したワークフローにより、帯電の要因を特定し、設計上のトレードオフを評価するとともに、宇宙飛行士の安全確保およびミッション成功にとって重要な領域に検証作業を集中させることが可能となる。

月面セルラー通信システムの性能検証にデジタルツイン技術を活用

 デジタルツイン技術を活用した月面のセルラー通信システム性能の検証では、Cesiumが忠実度の高い3D空間データおよび実在の月面地形を再現したデータをSynopsysのデジタルミッションエンジニアリング環境に統合し、「Ansys RF Channel Modeler」を用いたRF信号伝搬性能の解析を可能にする。また、「Ansys HFSS」は宇宙服やローバーに搭載される高精度アンテナモデル向けの技術スタックにも採用されており、月面全体にわたるエンドツーエンド通信の評価に役立つ。

 NASA グレン研究センターにおけるNASA SCaN(Space Communications and Navigation)主導のLunar 3GPP(Lunar 3rd Generation Partnership Project)チームは、これらのソリューションを活用し、現実的な運用シナリオのコンテキストでRFカバレッジを可視化/検証している。ここで得られた知見は、将来の月面基地外での通信接続を可能にする無線機器の配置設計に活用される。また、月面のクレーターや岩石形成といった地形要素によって生じる潜在的なシャドーゾーン(通信遮断領域)を特定することで、宇宙飛行士やローバーが回避すべきエリアを明らかにし、ミッション計画の策定を支援する。

 Synopsys傘下のAnsys Government Initiativesのアドバイザーで、元NASA 長官のJim Bridenstine氏は「アルテミス計画は、人類を再び月へ送り、将来の探査に向けた基盤として持続的な月面滞在を確立することを目的とした野心的な共同の取り組みである。過酷である一方で大きな可能性を秘めた宇宙環境へと進出を深める中、迅速かつ大胆で効果的なイノベーションが求められている。ハードウェアを構築する前に設計を仮想環境でモデリングし、テストや改良を可能にするデジタルエンジニアリング技術を採り入れることは、リスク低減とイノベーションの加速に向けた重要な一歩となる」と述べている。

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