現場改善の意思決定に極めて効果的な「作業習熟分析」と「作業能率分析」:現場改善を定量化する分析手法とは(18)(4/4 ページ)
工場の現場改善を定量化する科学的アプローチを可能にする手法を学習する本連載。第18回は、現場改善の意思決定に極めて効果的な「作業習熟分析」と「作業能率分析」について説明する。
(3)作業能率の向上対策
グループ作業における作業能率の向上施策は、能率低下の現象や原因によっても変ってきますが、主な施策を以下の(a)〜(n)にまとめておきました。これらの作業能率の向上施策をまとめますと、結局これらの中で作業能率の向上に大きく効果を発揮するのは、「作業者意識の高揚」「現場の管理監督者と現場リーダーに対する管理能力の向上」「職場環境の改善と工程管理の科学的根拠に基づいた立案」の4つに分類することができます。
特に、管理監督者と現場リーダーの果たす役割は極めて重要な位置付けになります。現場リーダーのマネジメント能力のいかんによって、能率は相当大きく変動するものです。従って上位管理者としては、現場の管理監督者やリーダーの人選については、どのような要件を考慮すべきかということも含めて、十分に検討を経た上で昇格の決定をすることが重要になってきます。
- (a)高能率作業者の活用(コンベヤーの先頭工程へ高能率作業者を配置する)
- (b)ラインの自主管理(目標への自主的挑戦)
- (c)コンベヤー速度の科学的決定(速度の可変化などを含めて)
- (d)作業配置の工夫(動作経済の原則に準拠)
- (e)作業者の適正配置(熟練作業者や未熟練作業者の配置によるラインバランス)
- (f)グループの作業編成替え(単調感の排除を考慮する)
- (g)グループリーダーの交代(ローテーションによる人材育成)
- (h)職場の管理監督者の変更(ローテーションによる人材育成)
- (i)余剰人員や端数人員の排除(最少人員での作業遂行、改善による所要人員の整数化、要員の機動的配置)
- (j)環境の改善(サブ組立作業をコンベヤーラインヘ編入、整理・整頓を徹底して見通しの良いレイアウトにする)
- (k)グループリーダーの再教育(既成観念の払拭など)
- (l)現場の管理監督者に対する新しい感覚の養成(過去の意識の変革)
- (m)グループ員による小改善の促進(モラルの向上)
- (n)作業中断の排除(科学的工程管理の実施)
◇ ◇ ◇ ◇
習熟曲線は、累積生産量が増加するに従って単位コストが減少するという経験則を示した曲線のことです。製品の累積生産量が増加するに従って、単位当たりの総コストが一定割合で減少しますが、この関係を表した曲線のことを習熟曲線もしくは「経験曲線」といいます。この現象は、米国航空機業界において学習曲線効果として発見されました。
企業が複数の事業を行う場合、お金の流れを示すキャッシュフロー(C/F:Cash Flow)を視点に、バランスの取れた収益の獲得と企業の成長を促進する戦略策定であるPPM(経営資源配分の適正化:Product Portfolio Management)における市場占有率と関連付けて事業戦略の優位性について新たな考え方が提案されました。このとき、習熟曲線効果は、生産規模の増加によって単位当たりの経費が削減されるので、コスト競争力の源泉となります。
また、習熟曲線から将来のコスト予測も可能です。習熟曲線は経験則のため、その発生メカニズムは十分明らかにはなっていませんが、繰り返し学習による能率向上が要因の一つであるため、特に、労働集約的な産業で効果的とされます。こうした産業において低コスト戦略によるシェア拡大の優位性を図るために活用されています。
例えば、新製品の製造や販売に際し、累積生産量を早期に増やすための積極的な機械設備の投資を行った上で、予想される累積生産量から習熟曲線に基づいて将来のコストを予測し、初期投資による赤字とはならない低価格設定によって高いシェアが獲得できます。こうした低コスト戦略が常に有効というわけではありませんが、習熟曲線効果に基づく戦略策定では、効果的な側面もあるため無視できません。
筆者紹介
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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