現場改善の意思決定に極めて効果的な「作業習熟分析」と「作業能率分析」:現場改善を定量化する分析手法とは(18)(1/4 ページ)
工場の現場改善を定量化する科学的アプローチを可能にする手法を学習する本連載。第18回は、現場改善の意思決定に極めて効果的な「作業習熟分析」と「作業能率分析」について説明する。
今回は、製造現場で作業者が業務に慣れ、効率や品質が向上していく過程を定量的に把握するための重要な手法である「作業習熟分析(Skill proficiency analysis)」についての話です。この分析の核となるのは「習熟曲線(Learning Curve)」の活用です。
作業習熟分析は、作業者が同じ作業を何度も繰り返して徐々に慣れていくことで、どのように作業時間が短縮されて安定していくかを分析する手法です。人は作業を繰り返すほど慣れていき、“動作がスムーズになる”“無駄が減る”“判断が早くなる”“手順が安定する”といった作業時間短縮の変化が起きます。この「慣れによる作業時間の変化」を習熟曲線として捉え、改善や作業者の教育訓練に生かすのが作業習熟分析です。
次に、「作業能率分析(Work Efficiency Analysis)」についての話も取り上げます。この分析は、業務の無駄を排除し、限られた資源(人、物、機械設備)で最大の成果を出すための手法で、あらゆる場面で幅広く活用されています。この分析の全体像を整理して説明します。作業能率分析は、一定の時間や人員で不良率や作業量について、どれだけの成果が得られたかを評価する分析手法です。生産性向上や無駄排除の基礎になり、とても重要な考え方の手法です。能率をひと言で説明すると、「一定時間内にできる仕事の割合」ということになります。
1.作業習熟分析
職種転換や多工程持ちにより未経験者や新人作業者が作業を行う時、未習熟のために能率が低下します。しかし期間がある程度経過すると次第に作業に習熟し、能率も向上してきます。このような未経験の作業者の経験日数と標準に達する期間を分析する手法を作業習熟分析といいます。分析結果の用途としては、以下の項目に活用されます。
- 作業ごとの習熟期間の設定
- 作業能率向上の施策立案
- 作業能率の管理
- 作業者の人員配置計画
- 作業者の作業訓練と指導
1.1 習熟曲線とは
人は経験を積みながら学習していきます。最初は作業者の担当作業をはじめとして、機械設備や治工具の操作、職場ルールなど、作業時間に影響を及ぼすとみられる諸事項に不慣れのため、多くの作業時間を必要とします。しかし、作業を繰り返し行っているうちに習熟(Learning)していき、作業時間が減少していきます。この場合の習熟は、「同一機能を果たすための行為に、繰り返しによる効果がある場合にみられる現象」と説明できます。同じ行動や動作を何度も繰り返すと、次第に慣れて上達していき、動作や作業リズムが早くなっていくことで、作業時間が短くなっていく現象です。
この習熟の現象は、日常の生活行動や工場などにおける各種の作業や企業の生産活動、経営活動などのあらゆる場面で確認することができますが、この状況を表す曲線を「習熟曲線」といいます。図1にその一例を示しておきました。習熟の解析モデルとしては、これまでも数多く適用されている対数線形習熟の他、対数非線形習熟、指数関数形習熟などがあります。また、この曲線は、次のような活動を行うときに役立てることができます。
- 新しい製品を開始する場合、その標準時間の見積もり
- 新しい作業者の教育や訓練計画
- ロットの大きさに対応した標準時間の補正
- 奨励給を設定するときの基礎資料
- 内外作コストの見積もり資料
1.2 経験曲線効果
経験が蓄積されていくと、習熟効果、分業効果、作業方法の改善、製品の標準化、製品の設計改善などによって、製品の累積生産量が倍加するごとに通常10〜30%のコストが下がる現象を「経験曲線効果(Experience Curve Effect)」といいます。この効果は、アメリカのボストン・コンサルティング・グループ(BCG:The Boston Consulting Group)によって提唱されたもので、「単位当たりのコストは、累積生産量が倍加するごとに20〜30%低下する」としています。
経験曲線効果は、経験と効率との間の関係を示す経験則であり、一般に個人や企業が特定の課題についての経験を蓄積するにつれて、より効率的にその課題をこなせるようになります。また、累積生産量の増加に伴って、製品数量ごとの間接費を含めた総コストが予測可能な一定の割合で低下していくことも指すとしています。
経験曲線効果は、ある業務がより頻繁に実行されるようになると、そのコストが減少することを表しており、この考え方はどのような商品やサービスにも適用できます。累計での生産回数が倍になるごとに、生産回数当たりの総費用(生産、管理、マーケティング、販売を含む)は一定速度で減少します。こうした効果は調査により、さまざまな産業で確認されていますが、数学的には図2の式で表されます。また、累積生産量が2倍になるごとに減少するコストの割合を習熟率(Learning Rate)といいますが、一般的に習熟率は先述した通り20〜30%程度とされています。
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