三菱と産総研が物理モデル活用のAI技術開発、サーボシステムの実機調整が大幅減:製造現場向けAI技術(2/2 ページ)
三菱電機と産業技術総合研究所が、共同で開発したFA向けサーボシステムのパラメーター調整回数を大幅に削減するAI技術について説明。AIと物理モデルの融合により、実験では熟練者が1週間かかるような調整作業を1時間まで短縮したという。熟練技術者不足が深刻化するSMTラインなどの製造現場の生産準備を効率化する。
2028年度に製品化、FA以外の領域にも適用へ
三菱電機では独自のAI技術ブランド「Maisart」の一つとして、FAのサーボシステム向けに2028年に製品化を目指す。また、エレベーターや鉄道、家電など、パラメーターの調整が必要な分野なら適用できる技術であり、同社のデジタル基盤「Serendie」を通じて、FA以外の各製品分野に展開を図る。
「サーボシステムに組み込むのか、ソフトウェアとして提供するのか、“両にらみ”の段階だ。高付加価値な表面実装機の市場の動きが大きくなっており、実装機メーカーや実装機を使ったラインの立ち上げに携わるSIer(システムインテグレーター)とも連携していきたい」(湯澤氏)
三菱電機と産総研の共同研究は2017年にスタートした。産総研は2015年に人工知能研究センターを設立し、機械学習を中心にAIの研究を進めている。三菱電機は製造現場の知見やノウハウを持ち、先端技術総合研究所やAXイノベーションセンター(2026年1月設立)で、それらに基づいたAI応用システムの開発などを手掛けている。
産総研 情報・人間工学領域 人工知能研究センター 研究センター長の片桐恭弘氏は「今回の技術はサーボシステムを中心としているが、他の機器にも適用できると期待している」と述べる。
三菱電機では自律性、安全性、物理世界での実効性という3つの観点でAIを研究している。既に、エッジデバイスで動作する製造業向け言語モデルや、AIの動作を短時間で漏れなく検証し信頼性を高める技術、そして現場の機器に関する物理モデルを組み込んだ「Neuro-Physical AI」などを発表した。
三菱電機 デジタルイノベーション事業本部 AXイノベーションセンター AI技術基盤開発プロジェクトグループ 研究開発部長の毬山利貞氏は「物理モデルとAIをどのように組み合わせれば有効なのかという点に関してはいろいろなパターンが考えられる。その中で、軸の見え方に対して物理モデルを用いると有効になる、ということを実機を用いて検証できたことは隠れた、かつ大きなブレークスルーになっている」と語る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
そのAIは期待通りに動く? 三菱電機が短時間の検証技術を開発
三菱電機はAIの動作を短時間で漏れなく検証する技術を開発した。
三菱電機が2つの技術でエッジ動作可能なLLMを高精度化、2026年度にも製品適用へ
三菱電機がエッジデバイスで動作する製造業向け言語モデルを開発。オープンソースのLLM(大規模言語モデル)をベースにエッジデバイスで動作可能とするとともに、タスク正解率をベースモデルの35.8%から約40ポイントの改善となる77.2%に向上した。
三菱電機の独自フィジカルAI、予防保全で学習データを9割削減し精度を3割向上
三菱電機が新たに開発した「物理モデル組み込みAI」について説明。対象機器の動作や制御に関わる物理モデルの理論式を組み込むことで、予防保全に必要な機器の劣化を推定するAIモデルの開発に必要な学習データの量を約90%削減するとともに、劣化推定の精度を約30%向上できた。
三菱電機と燈が目指す暗黙知のデータ化、現場で使えるフィジカルAI
三菱電機と燈は「協業に関する戦略発表会」を開催。AI活用による協業戦略について説明した。三菱電機の持つ現場の知見や制御技術と、燈の高度なデジタルツインやAI技術を融合し、フィジカルAIの実装を加速させる。
なぜ三菱電機がラダー生成AIに挑んだのか、“精度”の先に描く姿とは
製造業における深刻な人手不足と熟練技術者の減少により、PLCを制御する「ラダープログラム」の技能継承が大きな課題となっている。これに対し、三菱電機が生成AIの活用に取り組んでおり、「IIFES 2025」ではラダー生成AIIのデモを披露し、反響を呼んだ。汎用LLMでは困難とされたラダー生成に、同社はなぜ挑み、いかに壁を乗り越えたのか、話を聞いた。
三菱電機のデジタル基盤「Serendie」はハードウェアを賢く進化させる原動力に
三菱電機がデジタル基盤「Serendie」関連事業の戦略について説明。2030年度のSerendie関連事業の目標として、売上高で2023年度比71%増の1兆1000億円、営業利益率で同7ポイント増の23%を掲げるとともに、同事業の拡大を支えるDX人財の数を2023年度の6500人から約3倍となる2万人に増やす。



