1クリック数秒で会社が窮地? もう一つの現場“間接業務”に生かすIE思考とは:“脱どんぶり勘定”の現場改善術(3)(1/4 ページ)
本連載では、製造、モノづくり領域に特化したプロ人材の伴走支援サービス「ウィズプロ」のプロフェッショナルが、現場の複雑な課題を整理し、改革を前に進めるための「実践的な手順」や「陥りやすいワナ」を具体的に解説します。今回は、「間接業務」に目を向け、IE(インダストリアルエンジニアリング)の視点で改善の手法を探ります。
製造現場の進化と、置き去りにされた「もう一つの現場」
全3回でお届けしている本連載。第1回「製造DXの成否は何で決まるか、『時間あたり100個できます』に隠されたウソ」では、過去の実績平均である「ナリユキ能力」を疑い、物理的な限界値である「理論原単位」を算出することの重要性をお伝えしました。DX(デジタルトランスフォーメーション)やIoT(モノのインターネット)といった“魔法のつえ”を振る前に、まずは自分たちの現場の真の実力を直視する泥臭さこそが全ての出発点でした。
続く第2回「『新しい機械を買うな!』工程並べ替えで生産増をかなえる『IEの魔術』とは」では、理論原単位をベースに、PERT図などの手法を用いて工程全体の「クリティカルパス(ボトルネック)」を見つけ出す手法を解説しました。数千万円の最新設備を導入する前に、現状のプロセスを因数分解し、無駄を削ぎ落とし、順番を入れ替える。これこそが、限られた経営資源で最大の効果を生み出すIEの魔術でした。
これまで語ってきたことは、実は決して目新しい魔法ではありません。日本の製造現場において、長きにわたり先人たちが脈々と受け継いできた「基礎の基礎」ともいえる考え方です。
しかし、時代は変わり、ツールは進化しました。今、私たちに必要なのは、バズワードと化した「DX」や「AI」といった華やかなツールに踊らされることではありません。もう一度、この基礎理論をしっかりと学び直し、現代のテクノロジーという「高解像度な測定器」を用いて、自分たちの現場を改めて定義し直すことです。
すでに多くの製造現場では、こうした日々の小さな改善活動(カイゼン)が実践されています。そこに、「理論原単位」という絶対的な基準と、データを客観的に取得/共有する少しのデジタルツールを加えるだけで、現場は劇的な進化を遂げます。小さくても確実な一歩を踏み出すこと。それが、製造現場を強くする唯一にして最短の道です。
さて、ここまでは「製造の現場(工場内)」に焦点を当ててきました。皆さんの工場でも、現場の作業員たちは1秒のロスを削るために知恵を絞り、動線を改善し、工具の配置を見直していることでしょう。
視点を変えて、事務所のデスクワークや、生産管理、品質保証、調達といった「間接業務」の領域に目を向けてみてください。そこには、製造現場と同じような「1秒にこだわる改善」は実践されているでしょうか?
間接業務の惨状:乱立するSaaSとブラックボックス化した業務プロセス
皆さんは、コンベヤーの横に仕掛品が山積みになっていれば「ボトルネックが発生している」と直感し、作業員が部品を探してウロウロしていれば「動線と5Sに問題がある」と即座に指摘するでしょう。
しかし、事務所の中はどうでしょうか?
「この販売管理システムからCSVデータをダウンロードして、こっちの生産管理システムに取り込むために、このExcelマクロを使ってデータ形式を変換しています。あ、でもこのマクロ、作ったAさんが5年前に退職してしまって……今は誰も中身をいじれないんです。エラーが出たら、手作業で1行ずつコピペして修正しています」
「最近、会社の方針で『ペーパーレス化』を推進するために新しいクラウドの経費精算SaaSを入れました。でも、現場からは『スマホで入力するのが面倒だ』とクレームが来て、結局、現場の班長が紙で集めた領収書を、事務のBさんが夕方にまとめてシステムに手入力で代行しています」
いかがでしょうか。皆さんの会社でも、似たような事象が起きてはいないでしょうか。
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