電信機から海底光ケーブルまで通信を支える技術の歴史、NTT技術史料館を訪ねる:モノづくりショールーム探訪(1/2 ページ)
情報通信インフラの歴史と技術の系譜を体系的に紹介する「NTT技術史料館」。本稿では同館の展示を通じて、日本の電気通信技術の発展の歩みと、その裏側にある技術者たちの取り組みを紹介する。
普段当たり前のように使っているスマートフォンやインターネット環境だが、これらの仕組みはどうなっているのだろうか。またどのような歴史をたどってきたのだろうか――。
製造業に身を置く方々であれば、これらの技術を全く気にしたことがないという人はいないと思われる。だが、これらの情報インフラの全貌を詳しく理解しているという人もまた少ないのではないだろうか。通信を成り立たせるためには、端末機器だけでなく、電話交換技術や通信オペレーション技術、さらには海底ケーブルや建築設備などさまざまな技術が必要になるからだ。そんな多岐にわたる要素技術を余すところなく紹介するのが、NTT武蔵野研究開発センタ内にある「NTT技術史料館」だ(図1)。
自主開発技術の歴史を新たなアイデアの源泉に
NTT技術史料館は、NTTグループの研究所によって運営されており、電気通信技術に関する多数の歴史資産のうち約1550点が展示されている。携帯電話や宅内電話など身近な機器に始まり、電話交換機や地下ケーブルの通り道である「とう道」の原寸大模型、海底中継器、さらに通信用建物や鉄塔の模型まで、通信に関するあらゆる技術が展示される(図2)。
NTT技術史料館が誕生した直接的なきっかけは、1997年に当時の代表取締役社長だった宮津純一郎氏が、NTTの分社化に伴い貴重な技術資産が散逸することを防ぐために発案したからだという。単一企業が設置するミュージアムとしては、展示物の密度や専門性において群を抜いており、一般向けとしては難易度が高いようにも感じるが、その理由について、NTT技術史料館担当者は「設立当初の目的が、これまでの自主開発技術を一堂に集めて系譜化し、次の世代につないでいくことでした。研究やアイデアの源泉にしてもらうことを狙いとしていました」と説明する。
こういった背景もあり2000年に開館した当初は、利用者はNTTグループ関係者に限られていたという。ただし「集めた技術は『国民的資産』と呼べるものになるという考えから、インターネットなどを通じて社外に向けた発信をするべきだという考えは、設立当時からあったようです」(史料館担当者)。そのため2010年から木曜日と金曜日に一般公開し、Webサイトでも展示内容を詳しく紹介している。
社会の中の通信を分かりやすく紹介
ここからは展示の一部を紹介していく。展示は「歴史をたどる」と「技術をさぐる」という2つのカテゴリーに分かれており、体験コーナーも設けられている。展示物がとても多いため、まずは「歴史をたどる」で、社会の動きに沿って電信技術の発展を追い、気になる分野については「技術をさぐる」で深掘りする見方がおすすめだ。
日本に電気通信技術が伝わったのは、1854年にペリーが電信機を持ち込んだ時のことだ。NTTの源流である逓信省が1885年に発足し、電報サービスや電話サービスを提供した。1952年からは日本電信電話公社、現在のNTTが情報インフラの構築や運用を担ってきた。NTTの歴史はほぼ日本の電気通信技術開発の歴史ともいうことができる。
地下1階のフロアでは、NTTの前史および、1960年頃に電話網が全国に行き渡るまでの歴史が紹介される。

図3(左):ブレゲー指字電信機と送信機。1870年に始まった電報サービスに使われた。その後、より通信速度の速いモールス式電信機に置き換わった。図4(右):国産1号の電話機。ベルが電話機を発明した2年後の1878年に工務省で作られた[クリックで拡大]
図5(左):1962〜79年に製造された「600形自動式卓上電話機」。品質面でも耐久面でも完成されたアナログ電話機といわれる。いわゆる黒電話の代表。家庭にあった人も多いだろう。図6(右):1969年「プッシュホン」。電話局内にある大型計算機で複雑な計算を行い音声で回答するサービスも提供していた。クラウドサービスの先駆けともいえる[クリックで拡大]1階から2階にかけては、1970年頃以降のモバイル化やサービスの多様化が紹介される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.



