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主応力とミーゼス応力は何が違うのか 「応力」で考える強度設計の基本若手エンジニアのための機械設計入門(14)(1/3 ページ)

3D CADが使えるからといって、必ずしも正しい設計ができるとは限らない。正しく設計するには、アナログ的な知識が不可欠だ。連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、入門者が押さえておくべき基礎知識を解説する。第14回は、強度設計の判断を支える「応力」の考え方について整理する。

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 連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、機械設計を始めて間もないエンジニアの皆さんを対象に、設計業務で押さえておくべき基礎知識や考え方などを分かりやすく解説していきます。

 機械設計において「強度設計」は避けて通れません。しかし実務の現場では、次のような会話がよく聞かれます。

材料がSS400だから大丈夫だろう

前回と同じ板厚だから問題ないはず!

CAEで赤くなっていないからOK

 これらはいずれも、判断の根拠が曖昧なまま設計が進んでいる状態です。材料名や板厚、CAEの色は判断材料の一部にすぎません。強度設計の本質は、材料でも板厚でも色でもありません。本質は――応力をどう理解し、どう判断するかにあります。

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応力とは何か

 機械設計において「応力」は避けて通れない概念です。しかし、応力を本質的に理解しないまま、CAEの結果だけを見て判断しているケースも少なくありません。

 応力とは、単位面積当たりに内部で発生している力の強さを意味します。例えば、同じ1000Nの力が作用しても、

  • 断面積が大きければ応力は小さくなる
  • 断面積が小さければ応力は大きくなる

という関係になります。

 つまり強度設計では、力の大きさそのものではなく、その力がどれだけ集中しているかが重要です。部品が壊れるかどうかは、外力そのものではなく、内部で発生した応力が材料の限界を超えるかどうかで決まります。設計者が見るべき対象は、一般に応力です。

なぜ応力で判断するのか

 材料には“許容できる限界”があります。それが降伏応力引張強さです。

  • 例:
    • 応力 < 降伏応力 → 弾性範囲(元に戻る)
    • 応力 > 降伏応力 → 塑性変形(元に戻らない)

 設計者が確認すべき点は、「今発生している応力が、材料の限界に対して安全か?」という一点です。この関係は「安全率」という形で定義できます。安全率を求める場合は、材料が破損/降伏する強度を基準応力として扱います。具体的には、

  • 引張強さ
  • 圧縮強さ
  • 降伏応力

などを用います。

 重要なのは、「どの応力を見れば、どのような壊れ方を予測できるのか」を理解することです。ここから応力の見方について整理します。

 参考例として、50×30×300mmの合金鋼製片持ち梁(はり)に、先端鉛直方向へ5000Nを負荷したCAE結果を示します(図1)。

安全率 最小安全率3.16(基準応力:降伏応力)
図1 安全率 最小安全率3.16(基準応力:降伏応力)[クリックで拡大]

強度設計の判断に迷わないために
〜最大主応力/最小主応力/ミーゼス応力の本当の意味〜

 CAEの結果画面には、以下に示すようにさまざまな応力が表示されます。

  • 最大主応力
  • 最小主応力
  • ミーゼス応力

 しかし現場では、「取りあえずミーゼスを見ている」「赤い部分があれば危険だと思っている」というケースも少なくありません。応力は単なる数値ではなく、破壊のメカニズムを読み解くための指標です。どの応力を見るかによって、予測できる壊れ方は変わります。ここでは設計判断に直結する視点で、それぞれの応力について説明します。

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