「新しい機械を買うな!」工程並べ替えで生産増をかなえる「IEの魔術」とは:“脱どんぶり勘定”の現場改善術(2)(2/3 ページ)
製造、モノづくり領域における現場の複雑な課題を整理し、改革を前に進めるための「実践的な手順」や「陥りやすいワナ」を具体的に解説する本連載。今回は「ボトルネックの特定」と「工程の並び替え」をテーマに、モデルケースの下でIE活用の具体的なテクニック/考え方を紹介します。
パターン(2):IE視点による「並列化・順序変更」(並列進行)
IEの基本動作に「同時進行」と「動作の入れ替え」があります。今回の条件にある「BとCは同時進行可能」という点がポイントになります。では、実際に工程を組み替えてみましょう。
- 【工程A】:作業者が部品をセットします(10秒経過)
- 【工程Bの始動】:作業者がB機のボタンを押します(一瞬)
- ここでの行動:B機が60秒かけて動いている間に、人間は別の仕事をします!
- 【工程Cの実施】:B機が動いている裏で、作業者は別のワーク(あるいは並行して流れているワーク)をC機にセットし、動かします
- 注意点:ここでは計算を単純にするため、B機の加工開始直後に作業者がC機へ移動してセット作業を行う時間は、B機の加工時間(60秒)の内部に含まれる(あるいはB機加工完了までの待ち時間に吸収される)ものとします。C機の稼働時間は40秒ですので、移動やセットの時間を考慮しても、B機の60秒の中にすっぽり収めることが可能です
- 【工程D】:B機とC機の加工が終わったら、それぞれのワークを取り出して箱詰めします(20秒経過)
この時の「全体のサイクルタイム」は何秒になるでしょうか?
パターン(2)のサイクルタイム計算(理論値)
人の動き:10秒(工程A)+20秒(工程D)=計30秒となり、機械の動き:60秒(工程B)と40秒(工程C)は、人の作業の合間や同時進行で処理されます。もし、1個流し(One Piece Flow)で、B機とC機へのセット/取り出しの移動ロスを無視して理想形を描くとこうなります。
- 工程A(セット):10秒経過
- 工程B(B機稼働開始):60秒カウントスタート
- (B機が動いている間に、作業者は前のサイクルのC機完了品を工程Dへ流し、次のワークをC機にセットする等の動きが可能ですが、ここではシンプルに「待ち時間の活用」と考えます)
- B機完了待ち、あるいはC機作業
- 工程D(取り出し):20秒経過
- B機が動いている60秒の間に、C機の作業40秒が終わってしまえば、C機の作業時間は「実質ゼロ」になります。しかし、B機へのセットや取り出しは必要になるのでB機の稼働を優先して作業をすることになります
入れ替えを実施した場合のサイクルタイム計算は以下の通りです。
10秒(工程A)+60秒(B機・C機同時稼働・ボトルネックはBの60秒)+20秒(工程D)=90秒
いかがでしょうか。パターン(1)の「130秒」から、パターン(2)の「90秒」へ。40秒、率にして約30%の短縮です。
新しい機械を買いましたか?いいえ。作業員を増やしましたか?いいえ。ただ、「B機が動いている間にC機を動かす」「順番を変えて並列にする」という手順の変更を行っただけです。これだけで、生産量は1.4倍以上に跳ね上がります。
「うちはこんな単純な工程じゃない」
そう思われる方もいるでしょう。しかし、原理は全く同じです。複雑な工程であっても、分解していけば、必ず「機械が動いているのに人がぼーっとしている時間」や「同時にできるのに直列にやっている作業」が存在します。
なぜ現場は「直列」で仕事をしてしまうのか?
「とっくにそのくらいのカイゼンは実施している!」
本当にそうでしょうか? この疑問に回答する方法が、理論原単位との比較です。
パターン(1)にあった、「作業者は、機械が動いている60秒間、エラーが起きないか心配なので機械の前で腕組みをして待っています。あるいは、次の準備もせずにぼーっと眺めています」は、大なり小なり、どこの製造現場においても発生している現実をこれまで見てきました。
理屈で言えば当たり前の「並列化」ですが、実際の現場ではなぜか「直列(A→B→C→D)」で行われていることが驚くほど多いのです。なぜでしょうか? ここにIE/DX以前の根深い問題があります。
「機械から離れるのが怖い」という心理
熟練工ではないパートタイマーや、多能工化されていない作業者の場合、「機械が動いている間はその場で見守っていないと不安」という心理が働きます。また、過去に一度でも機械トラブルで停止した経験があると、「監視」が業務として正当化されてしまいます。
しかし、正常に動いている機械を見ているだけの時間は、付加価値ゼロです。これは「仕事」ではなく「待機」です。
「1個流し」の誤解
トヨタ生産方式などで「1個流し」が良いとされていますが、それを「1個の製品が最後まで完成するまで、次の製品に着手してはいけない」と誤解しているケースがあります。
本来の1個流しは「仕掛品(在庫)を溜めない」という意味であり、「手待ち時間を作っていい」という意味ではありません。
「見かけの稼働率」への執着
ここが最も厄介な点です。工程を並列化すると、B機(60秒)が動いている間、C機(40秒)は先に終わってしまい、20秒間止まることになります。これを見た現場監督者が、「おい、C機が止まっているぞ!もったいないからもっと回せ!」と指示を出してしまうのです。
これこそが「部分最適のワナ」です。全体のボトルネックはB機(60秒)なので、C機がそれより速く動いても、仕掛品(在庫)の山ができるだけです。
「C機は20秒休んでいていい」。この判断ができるかどうかが、マネジメントの分かれ道です。全員が忙しく働いている(機械も人もフル稼働している)現場が良い現場ではありません。
「ボトルネック以外は、サボっていても全体の生産量は変わらない」。この事実を直視することが、IE的思考の第一歩です。
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