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なぜ今、ロボットオフラインティーチングが注目されるのかロボットオフラインティーチングの基礎と可能性

本連載では、前後編の2回にわたってCADデータとシミュレーション技術に基づいてロボットプログラムを仮想環境で作成/検証し、実機にダウンロードする「ロボットオフラインティーチング(Robot Offline Programming:OLP)」のメリットや実践のポイントについて、事例なども交えてご紹介します。前編ではOLPの基礎などを整理します。

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 製造現場における産業用ロボットの導入/運用において、ロボットティーチングは欠かせない要素です。従来は、ティーチングペンダントと呼ばれる専用の操作機器を用いて直接ロボットを操作しながら動作を記録するオンラインティーチングが一般的でした。しかし、昨今の現場では、従来手法が工数、安全性、生産性の面で課題となっているケースが増えています。

 本連載では、こうした状況への有力なアプローチとして「ロボットオフラインティーチング(Robot Offline Programming:以下、OLP)」を取り上げます。前編となる本稿ではOLPの基礎と背景、そして従来の手法である「オンラインティーチング」に内在する課題について整理します。

ロボットティーチングは「導入の肝」

 産業用ロボットを現場に投入する際、ロボットが「何を、どのように行うか」を人が定義して教え込む必要があります。これがティーチングです。

 ティーチングは、ロボットの動作を再現するためのプログラム生成の前提となるため、ロボット活用の最重要プロセスといえます。しかし、従来の手法であるオンラインティーチングには次のような制約があります。

ティーチングペンダントによるオンラインティーチングの現場課題

 オンラインティーチングでは、ティーチングペンダントを用いてロボットの各関節やツール位置を1点ずつ教示し、プログラムとして記録します。この手法には次のような課題が現場でしばしば指摘されています。

ライン停止が避けられない

 ティーチング作業中は、ロボットを実際に停止させた状態でポイントを記録する必要があるため、生産ラインが止まってしまいます。ティーチング時間が長くなるほど生産性が低下し、その間の損失は現場で深刻な問題になります。

熟練者依存と人材不足

 ティーチングには専門知識が必要で、「ティーチング作業者」(ティーチングマン)として教育/認定を受けた人材が求められます。こうした技能者は限られており、配置できる人が現場に常駐していないケースも少なくありません。

メーカーごとに操作が異なる

 ロボットメーカーからは操作性を改善した新型ペンダントや簡易機能が登場していますが、その多くは自社ロボットに限定されたものです。

 マルチベンダー化が進む現場では、メーカーごとに異なる操作体系を習得しなければならず、これが新たな属人化や教育コストの増大を招いています。特に高精度な軌道制御が求められる用途では、依然として専門的なティーチング作業から脱却できていないのが実情です。

操作性は改善されても構造的な限界が残る

 簡易的なティーチングは、軽量搬送や単純動作には適しますが、溶接/切断/塗装などの精密動作では、従来の方法と同様に多くのポイント設定と検証が必要になります。また、実機で動かしながら教える限りしばらく生産を止める必要があり、根本的な解決には至っていないという指摘もあります。

実機を前に行う従来のロボットティーチングのイメージ
実機を前に行う従来のロボットティーチングのイメージ

 これらの原因として、各ロボットメーカーが機能改善を進めてはいるものの、依然として「リアルな現場環境で停止時間を短縮し、なおかつ誰でも使えるレベルのティーチング」を実現するには至っていない、という課題があります。

 多くの改善はティーチングペンダント操作の簡易化にとどまり、ゼロから線形/円弧などの全動作を教える手間そのものを無くすには至っていないのです。

OLPの基本とは

 それでは、OLPはどのように位置付けられるのでしょうか。

 OLPは、CADデータを基に構築された3D仮想環境上で、ロボットの動きをシミュレーションする手法です。つまり、「実際に動かす前にPC上で検証し、その結果を各ロボットプログラムとして転送する」ことが可能になります。これにより、稼働中の現場設備を止めることなく、PC上で次工程の準備を完結させることができます。

 この手法は、ロボットの稼働率を維持しながら教示作業を進めることができる点で、従来のオンラインティーチングに対する大きなアドバンテージを持っています。

OLPが注目されている理由

 OLPの源流は、1980年代から進化してきたロボットシミュレーション技術です。当初は可視化ツールでしたが、CADデータの普及や計算能力の進化により、仮想空間で実動作を検証できるツールへと進化してきました。

 近年は製造現場の設計データと現場運用のデジタル連携が進展しており、設計段階で検討した工程をそのまま仮想環境に持ち込めるようになっています。このようなデジタル化の動きが、OLPの実務活用を後押ししています。

よくある誤解とその解消

 OLPに対しては、「大規模工場向けの技術」「使いこなすのが難しい」「導入コストが高い」といった誤解が根強い面があります。しかし、実際には少量多品種生産や頻繁な段取替えが求められる現場において、現場の負担を軽くし生産性を高める有効な手段として評価され始めています。

 また、近年のOLPは「使いやすさ」が飛躍的に向上しているため、熟練者だけのツールではありません。高度なプログラミング知識がなくても、直感的なUIやテンプレートを活用することで、誰もが標準化された高品質なプログラムを作成できる環境が整いつつあります。

 これは、単なるペンダント操作の簡略化を超えた、生産プロセスの改善といえます。

OLPがもたらす主なメリット

 OLPの最大の特長は、生産ラインを止めずにプログラム作成/検証が可能な点です。これによりライン停止の削減、設計データの再利用、安全性の向上、標準化されたロボットプログラムの量産展開が実現しやすくなります。

 加えて、設計段階での干渉検証や、ワークと設備の位置関係の確認といった本番前の問題解決ができる点も、現場の手戻りや再稼働作業を減らすうえで有効です。

 次回は、OLPを現場に導入するための具体的なステップや準備、そしてどのような効果が得られているのかについて、事例を交えてご紹介します。現場での活用を検討されている方にとって、実践的なヒントとなる内容をお届けします。

著者情報

中村 正明(なかむら・まさあき)
ビジュアル・コンポネンツ・ジャパン株式会社 カントリーマネージャー

自動化やロボティクス、産業用ソフトウェア分野での経験に加え、欧州とアジアの各市場をつなげる国際的な経験を併せ持つ。ビジュアル・コンポネンツではその経験を生かし、日本事業のビジネス開発、カスタマーサクセス、パートナーシップなどを統括し、国内においてビジュアル・コンポネンツの存在感の強化を図る。


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