同じ機械なのに1号機はOK、2号機はNG 設計者を悩ませる“再現しない不具合”:冴えない機械の救いかた(1)(2/4 ページ)
本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第1回は、同じ図面で製作した複数台の直動パーツフィーダーにおいて、ボルトが1週間で折れたり折れなかったりするという、再現性のない厄介な事例を紹介する。
図3に、今回紹介するパーツフィーダーを示します。といっても、実物そのままを提示できるわけではありません。ここでは、動作を分かりやすくする目的で、筆者が100%作り直しています。お皿に供給したいもの(以降「ワーク」と呼びます)を載せ、お皿を振動させてワークを一定量落とすことで供給します。通常、電源は配電盤のブレーカーから直接結線しますが、後の説明のために図ではコンセントを描いています。ボリュームは振動の大きさを調整するためのものです。
図4に、板ばねユニットとアクチュエーターを示します。板ばねユニットには、材質の異なる板が重ねてあり、ボルトで固定されています。アクチュエーターは、コイル(電磁石ですね)と永久磁石から構成されており、コイルに交流電流を流すことで磁石に力が発生します。ボリュームは、コイルに流す電流を調整します。ここでは、交流電流を流す構成としています。
もちろん、実際のアクチュエーターはこれほど単純な構造ではないことはお分かりいただけると思います。例えば、交流電源を直流に変換し、任意の周波数でスイッチングすることで、特定の周波数で力を発生させたり、さらに細かくスイッチングを制御して、コイルに流す電流の波形そのものを調整したりすることも可能です。いわゆるインバータ制御ですね。シリーズの後半で、コイルに4[kHz]の正弦波を流した例を紹介する予定です。
少しずつ供給できる理由
図5に、磁石に発生する力とお皿の変位を示します。コイルには交流電流を流すため、コイルが発生する磁場の方向は反転します。いわゆる「交番磁界」です。お皿に固定されている磁石のN極とS極の方向は決まっているので、磁石とお皿には交番磁力が作用することになります。
板ばねの形状によって、変形しやすい方向が決まり、これを2個構成の板ばねユニットにすることで、お皿の振動方向をある程度決めることができます。図5の矢印の方向に、お皿は振動することになります。
それでは、「少しずつ供給できる理由」を角砂糖を使って説明します。図6に、振動しているお皿に載っている角砂糖に作用する力を示します。図6上段は、お皿が左上方向に移動するときを示しています。移動方向に重力に逆らう成分が含まれているため、角砂糖はお皿に押されて移動します。移動するということは慣性力が発生しており、角砂糖はお皿を押すことになります。この慣性力と、角砂糖に作用している重力によって、角砂糖とお皿の間に摩擦力が発生し、角砂糖はお皿の上であまり滑らずに移動します。
次に、お皿が右下に移動するときを考えます(図6下段)。このとき、角砂糖はお皿から力を受けず、重力だけが作用します。お皿の移動速度が速いため、多くの場合、角砂糖は宙に浮いて自由落下します。この結果、お皿の端と角砂糖までの距離がL1からL2へと縮まり、角砂糖は左方向に移動したことになります。
なお、「宙に浮いて」と書きましたが、実際には宙に浮かなくても、図6の上段と下段では発生する摩擦力が異なるため、角砂糖とお皿が常に接触している状態でも、滑る量に差が生じ、結果として角砂糖は左方向に移動することになります。
図6では、説明を分かりやすくするために、お皿を傾斜させて描いていますが、実際にはお皿が水平に置かれていても、移動方向(赤色ベクトルの方向)が傾斜していれば、角砂糖は少しずつ移動します。以上が、パーツフィーダーの原理です。
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