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SDVのトップを快走するパナソニックオート、オープンソース活動が原動力にSDVフロントライン(2/4 ページ)

自動車産業でSDVを推進するキーパーソンのインタビューを掲載していく本連載。第5回は、国内大手ティア1サプライヤーであるとともに、SDVに関する先進的な取り組みで知られるパナソニック オートモーティブシステムズの水山正重氏に話を聞いた。

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既存の自動車業界がSDVにうまく対応できていないのはなぜか

MONOist とはいえ、先ほどの指摘に合った通り既存の自動車業界はSDVにうまく対応できていません。これはなぜでしょうか。

水山氏 大きく分けて理由は2つあると考えている。1つは、分散配置型の小規模なECUのソフトウェアを50個、100個と開発することと、コード行数で1000万以上になる大規模なHPCやドメインコントローラーのソフトウェアを開発することが根本的に違うためだ。

 マイコンで駆動するような小規模なECUで価値を提供しているのはハードウェアであり、ソフトウェアはそのハードウェアを機能させるために開発されてきた。一方、HPCやドメインコントローラーに実装する1000万行以上のソフトウェアはそれ自体が価値を作り出すものであり、そのソフトウェアを動かすためにハードウェアを作るという逆転現象が起きている。

 そして、このような大規模なソフトウェアはアーキテクチャをしっかり設計することが不可欠だ。従来の小規模なECUのソフトウェアは、アーキテクチャ設計をしっかりやらなくても、何を制御すべきかのロジックを作ってアルゴリズムを理解さえしていれば開発することができた。しかし、SDVに求められる大規模なソフトウェアは早いスピードで継続的に進化させていく必要があるが、ソフトウェアのアーキテクチャに必要な要素や知見は小規模なECUのソフトウェアとは全く異なるものになっている。

 その一方で、クラウドのような大規模システムで動作しているソフトウェアと同じ技術やアーキテクチャをそのまま使って開発すればいいというわけではない。クラウドは、ハードウェアの制約がほとんどない上に負荷が増えてきたらハードウェアを継ぎ足して拡張できるが、自動車の場合は一度ハードウェアを組み付けて出荷したらそのようなことはできない。つまり、組み込みのハードウェアの制約を持ちながら、何千万行以上、今や2桁億行にも達しようとしている複雑なシステムを動かさなければならないという独特の状況にあるわけだ。

MONOist もう1つの理由は何でしょうか。

水山氏 これは家電事業に携わってきた中で経験してきたことだが、単純にハードウェアをソフトウェアに置き換えるという考え方で取り組んでもうまくいかない。ソフトウェアというもののポテンシャルを生かして製品づくりを変えなければならない。

 最も分かりやすい事例になるのが「iPhone」だろう。ソフトウェアの強みを生かしてアプリのマーケットを作り出し、エコシステムも発展させ、それらの相乗効果でiPhoneというデバイスも売れるようにした。そして、デバイスの世代を超えて購入から5年以上にわたってソフトウェアのアップデートを行うなど、ソフトウェアのポテンシャルをアグレッシブに生かして製品の在り方や価値観を変えた。

 SDVも、そういったことをやるかやらないかで競争力が変わってくるだろう。SDVに向けた手段を議論していた2015年ごろと比べて、現在は状況が顕在化しているとみている。

MONOist ソフトウェアのポテンシャルを生かすSDVの開発に取り組むにはどうすればいいのでしょうか。

水山氏 従来はハードウェアファーストで、ハードウェアを動かすためのソフトウェアを作っていた。自動車のモデルチェンジを行う際にはハードウェアを変えて、それに付随する形でソフトウェアも全て入れ替えていた。しかし、SDVとして大部分の価値をソフトウェアで実現していくのであれば、これまでのようにモデルチェンジによってソフトウェアを捨てるようなことはできない。車種やクルマの世代を超えてソフトウェアを共通にしていかなければならない。

ハードウェアファーストからソフトウェアファーストへ
ハードウェアファーストからソフトウェアファーストへ[クリックで拡大] 出所:パナソニック オートモーティブシステムズ

 半導体も同じベンダーのものを使い続けるとは限らない。これまではA社のSoCを使っていたが、次からはB社のものを使うかもしれない。そういう意味では、ハードウェアがまだなかったとしてもソフトウェアを開発できなければならないだろう。だとすれば、コンピュータ上に仮想的なハードウェアを構築し、その仮想ハードウェア上でソフトウェアをどんどん発展させて、実際に自動車を作る際には仮想ハードウェアと互換性のあるハードウェアを使うというアプローチが必要だ。発想を従来と真逆にしていかなければならない。

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