AI技術の進化は製造業の品質や人手不足の問題解決に貢献できるのか?:MONOist 2026年展望(2/2 ページ)
2025年はAI技術がさらに進化し、製造現場向けのAIソリューションも数多く登場した。AIを活用することで、製造業の品質や人手不足の問題解決に貢献できるのか、2026年以降の動向を考察していく。
検査工程の自動化に向けて一歩先を行く「AI×外観検査」も
品質不正を防ぐために自動で製品を検査して記録する環境を作り上げることも重要だが、従来の技術だけでは不可能な部分が存在していた。ここにAIを活用して今までできなかった検査を自動で実施できるようにするソリューションが次々と登場してきている。特に、AIと外観検査機を組み合わせた技術や製品の進化は著しく、2025年も多くの企業がAI外観検査ソリューションを披露した。
ユアサ商事は2025年6月に、AI外観検査装置「F[ai]ND OUT(ファインドアウト)シリーズ MEX TYPE-S」を発表した。同製品は、シャフトをはじめとする金属製品の検査に特化しており、1台の機械で外観検査と寸法検査を実施できる。ワンパッケージで簡単にラインに設置でき、最短5分で検査が可能だ。同社は今後も多様な金属製品に対応できるように製品開発を進めている。
近年、自動車業界向けの部品は、検査測定のトレーサビリティーと規格が年々強化されており、インライン検査や全品検査が必要になるなど、従来よりも高い検査頻度を求められる時代になっている。しかし、その検査頻度の増加に合わせて担当の従業員を増やせるわけではなく、新しく工数を増やしてもそこに人数をかけられないのが現状である。
人数をかけられない以上、工程の省人化やさらなる自動化を進めなければならず、寸法検査と外観検査を同時に実施できる検査機の需要は今後も増加していく可能性が高い。特に製造現場ではさまざまな年齢/国籍の作業者が同じ場所で作業しており、1つの製品を測定する上でも、人による測定具の微妙な扱い方の違いや測定箇所の伝達が不十分で検査寸法に変化が出てしまうという人為的なミスも自動化によって防ぐことができる。
また、外観検査の自動化を進める上で避けては通れないのが、製品に問題がないのに検査装置が不良(NG)品と判定してしまう「過検出」への対処だ。検査機の判定閾値を厳しく調整すると、製品に対する光の当たり方のわずかな違いでも過検出が発生する可能性がある。過検出した製品の再検査を実施しようとすると、そのために無駄な工数を割かなければならず、生産効率の低下やコスト増加を引き起こしてしまう。
このような課題に対しても、AIを活用することで課題を解決しようとするソリューションが登場し始めている。東芝デジタルソリューションズは2025年12月に、特許出願済みの「欠陥判定最適化手法」を採用した、製造業の外観検査の自動化を支援する「Meister Apps AI画像自動検査パッケージ」の新バージョンの提供を開始している。
欠陥判定最適化手法は同パッケージが提供してきたAIによる「良品学習機能」に、特徴量解析を用いた補正や分類処理などを組み合わせている。これにより、欠陥画像の位置や輝度のばらつきを補正して同一条件で判定し、欠陥部分から抽出した特徴量を基に製品を分類でき、その上で分類パターンごとに個別の良品閾値を設定して合格判定が行えるようになる。
AIが人間の作業者や現場を管理する時代も近い?
AIを活用し、現場作業者が正しい動作をしているかを判別する診断ソリューションも登場している。「IIFES 2025」(2025年11月19〜21日、東京ビッグサイト)では、富士電機が2026年度に販売を予定している、「作業動画診断システム」を披露した。
同システムは組み立て工程など人作業での適用を想定して開発を進めており、作業をしている様子を動画で撮影し、これを骨格推定AIにより動作判定する。正しい動作から外れた場合、作業ミスを即座に検知してアラートを送ることができる。
現場設備の運転管理/保守点検(O&M)といった動きにもAIを活用する動きが見られている。日立製作所(以下、日立)が2025年11月に、同社の研究開発グループ 国分寺サイト(協創の森、東京都国分寺市)において開催した、最新の研究開発成果に関する展示イベント「Technology Community 2025」では、インフラ設備の監視や制御の分野でフィジカルAIの適合を目指していると説明した。
同社はロボットとメタバースを組み合わせて現場の人手不足解消に貢献する動きや、フィジカルAI制御技術をコアとし、ロボットを活用した製造業向けO&Mサービスの研究/開発にも取り組んでいる。
AI技術がこのまま進化すれば、AIを駆使したシステムで生産現場を管理する動きも加速していくだろう。人を介在しない管理体制の構築を支援するソリューションがどのように誕生してモノづくりに関わっていくのか、その動向に注目していきたい。
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