なぜ今CLOが必要なのか、分断とローカル化の中での最適なサプライチェーンとは:サプライチェーン改革(2/2 ページ)
ローランド・ベルガーは、「アジアのサプライチェーン再構築の要諦(ようてい)とは」をテーマに記者説明会を開催し、グローバルやアジア各国のサプライチェーンの最新動向に触れながら、日本企業にとってのポイントを解説した。
サプライチェーンで考えるべき5つのリスクとは
こうした中で日本企業は、どのような形でサプライチェーンを管理、運営していけばよいのだろうか。持続可能なサプライチェーンを構築するためには、経済、環境、地政学、社会、技術の5つのリスクに柔軟に対応することが必要になる。
経済リスクには為替変動やインフレ、環境リスクには自然災害や資源不足、環境規制などが含まれる。地政学的リスクとしては、紛争やテロ、貿易規制が挙げられる。「これらの伝統的なリスクについては日本企業は十分な対応ができている。特に環境リスクについては、多くの災害から学んだことで世界的に見ても優れた対応ができている」と小野塚氏は考えを述べる。一方で、情報漏洩(ろうえい)やシステム障害などの技術リスク、人権侵害やパンデミックなどの社会リスクについては「十分に対応できているところはそれほど多くはない」(小野塚氏)としている。
特にサプライチェーンのリスク対応は、自社内の問題だけでなく、調達先や納品先、物流なども管理対象となる。「東日本大震災では、1次サプライヤーや2次サプライヤーは、複線化ができていたものの、その先のサプライヤーが共通となっており、そのデバイスが手に入らないことで自動車の生産ができなくなるような事態が発生した。企業の壁を越えて、サプライチェーン全体を管理する必要がある」と小野塚氏は述べる。
サイバー攻撃で工場停止に追い込まれた報道が続くなど、新たなサプライチェーンの課題も現実化してきている。サイバー攻撃は年率30%で増加しており、無視できない状況になっている。「自社だけでなく、取引先への攻撃の踏み台にされるケースも増えている。欧州や米国などの企業では取引要件としてサイバーセキュリティ対策を組み込むケースも増えている」と小野塚氏は説明する。
CLO選任を契機に「サプライチェーン最適化」を経営課題に
これらの複雑化するサプライチェーンと、それに関するリスクに対応していくためには、関連するそれぞれの部門が個別に動く状況では難しい。そこで小野塚氏は、日本で2026年4月から設置が義務付けられる「物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)」(特定荷主のみ)の意義を訴える。
これは「物資の流通の効率化に関する法律(通称、物効法)」で義務化されたもので、製造業や流通業などの特定事業者の荷主企業のうち、年間取扱貨物量が9万トン以上の事業者(特定荷主)が対象となる。この重量には出荷量だけでなく入荷量も含まれるため、大手製造業の多くがCLOを設置しなければならなくなる。
「サプライチェーンの運営で本当に考えるべきことは、全社戦略に沿った形でサプライチェーン全体で最適化できているかどうかということだ。例えば、一般的には在庫が悪だとされているが、物流事情などですぐに部品の手配ができないことが把握できているのであれば、その分を在庫として持つことで、売り上げの最大化につながる。こうした判断を柔軟に行えるかどうかが、サプライチェーンを正しく運営できているポイントとなる。CLOはそうした役割を担う役職となるため、これを契機にサプライチェーンの最適化を検討する良い機会となる」と小野塚氏は考えを述べている。
ちなみにCLOを設置し、サプライチェーン最適化に取り組む特定荷主企業の数について、小野塚氏は「ローランド・ベルガーの調査では、対象企業が3200社ほどだと見ているが、CLOを設置して積極的にサプライチェーン最適化を推進している企業は500社ほどだと想定している。その後に、500〜1000社ほどがセカンドランナーとして、危機意識を持って対策を進めようとしている企業がいると予想する。ただ、残りの半数強の企業はいまだに特に対策をしていない層だと見ている。これらの企業も2026年4月以降は対応が必要になるため、一気に浸透が進むだろう」と小野塚氏は語る。
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