SCMの勝敗を分けるのは「データ量」、パナソニック コネクトが描く先行者利益:製造マネジメント インタビュー(1/2 ページ)
パナソニック コネクトは、「Panasonic Group IR Day 2025」における発表をフォローする合同取材に応じ、SCM(サプライチェーンマネジメント)ソフトウェアの動向についての説明や、2026年3月にCEOを退任するパナソニック コネクト プレジデントの樋口泰行氏の今までの振り返りなどを行った。
パナソニック コネクトは、「Panasonic Group IR Day 2025」における発表をフォローする合同取材に応じ、SCM(サプライチェーンマネジメント)ソフトウェアの動向についての説明や、2026年3月にCEOを退任するパナソニック コネクト プレジデントの樋口泰行氏の今までの振り返りなどを行った。
ブルーヨンダーはついに回収フェーズに
パナソニックグループは2025年12月2日に「Panasonic Group IR Day 2025」を開催し、その中で同グループが注力する「ソリューション領域」で成果を残している3つの事業領域の1つとして、パナソニック コネクトのSCMソフトウェア事業について説明した。パナソニック コネクトが推進するSCMソフトウェア事業は、買収したBlue Yonder(ブルーヨンダー)を中心に展開するものだ。
ブルーヨンダーは買収後に、クラウドネイティブな次世代プラットフォームへの移行を進めるために、2023〜2025年の3年間で2億米ドルの投資を行い、さらに生成AI(人工知能)などに対応したコグニティブサービスを実現するために、投資期間を1年間延長し、最終的に4年間で3億米ドル(約466億円)の投資を行っている。そのため、なかなか収益的な価値を生み出せない状況が続いていた。しかし、2025年度で投資のピークを過ぎることから、今後は回収フェーズに入っていく見込みだ。
樋口氏はブルーヨンダーの動向について3つのポイントを強調する。1つ目は新プラットフォームによるコグニティブサービスの本格展開だ。「コグニティブサービスの本格展開で、市場の評価は非常に高まっている。受注残となるRPO(残存履行義務)の金額は、130%以上となっている。これをARR(年間経常収益)につなげていくことが重要だ。10億ドル以上の取引の数も1〜9月で2.8倍に成長し、トップラインの成長が続いている。SaaS比率の上昇や固定費の削減、戦略投資のピークアウトがあることを考えれば、早期の単年度黒字化を見込める状況だ」と樋口氏は述べる。
2つ目は、解約率についてだ。ブルーヨンダーでは2024年末にサイバー攻撃を受け、情報漏洩(ろうえい)が発生したことから、一時的に解約率が高まっていた。「SCMソフトウェアはミッションクリティカルであるため、解約しないのが当たり前だが、サイバー攻撃の影響で、通常より高い時期が続いていた。しかし、現在は約1年間顧客へのフォローを進めてきたことから回復している」と樋口氏は説明する。
3つ目は、減損リスクだ。ブルーヨンダーは計画が何度も遅れたことからそのリスクを懸念する声も多いが「今回は計画に対し余裕率は20%以上あるため、減損リスクはほぼないといえる」と樋口氏は自信を見せる。
事業独自のデータをより多く制することが先行者利益に
投資フェーズが一巡したことに対し樋口氏は「従来は古い製品だと分かっていても営業が売らなくてはならない難しさがあった。そういう生みの苦しみもあった。今後は本格的にコグニティブサービスが展開でき、ARRを本格的に伸ばしていける」と語る。従来型のサービスと、新たなコグニティブサービスの比率については「比率は言えないが、コグニティブサービスについては20%以上の成長を続けている一方で、既存のサービスは横ばいの状態だ。そのため必然的にコグニティブサービスの比率は高まっている」(樋口氏)。
一方、SCM領域で同様のコグニティブサービスを展開するような競合企業も登場している。現在は新プラットフォームで差別化できても今後はこれらの優位性が失われる可能性もあるが、パナソニック コネクト 執行役員 シニア・ヴァイス・プレジデントでCTOの榊原彰氏は「そうではない」と強く否定する。
「AIなどが目覚ましい勢いで発展する中、データ量をより多く集めるための時間との戦いになっている。有効なデータをより多く集めることで、生成AIやAIエージェントの精緻度が高まり、実現できるサービスの価値が高まるからだ。その点で、より早く統合型プラットフォームを整え、あらゆるデータを統一基盤上で扱えるようにしたことで、一日の長を生み出せたと考えている」(榊原氏)
加えて、Microsoft(マイクロソフト)やSnowflake(スノーフレーク)などとの強固なパートナーシップも、強みになっているという。「例えば、スノーフレークとは共同でサプライチェーンに特化したグラフデータベースを自動で作成する仕組みなども開発した。こうしたパートナーシップで新しい効果的なサービスを生み出せる点は強みだ」と榊原氏は述べている。
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