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人手不足の日本で期待される「ロボット活用」の世界ディープな「機械ビジネス」の世界(4)(1/2 ページ)

本連載では、産業ジャーナリストの那須直美氏が、工作機械からロボット、建機、宇宙開発までディープな機械ビジネスの世界とその可能性を紹介する。今回は、労働力不足の中でさらなる活用が期待されるロボットについて触れる。

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 人類は歴史上、さまざまな生産技術の革命とエネルギーの変換により、新しい道具を出現させ、生活をより快適なものにしてきました。その一方で、現在、少子高齢化、労働人口の減少などの課題が深刻化しています。

 特にこれから人口減少や高齢化の影響を大きく受ける日本では、そうした労働力不足への対策の1つとして、「ロボットの活用」が有望視されています。

「人手不足」「後継者難」での倒産は過去最多を更新

 ロボットにはいろいろな種類がありますが、経済産業省のロボット政策研究会では、ロボットの定義について「センサー、駆動系、知能/制御系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」と定義しています。

 また、ロボットは、工場における生産財として活用される「産業用ロボット」と、医療/福祉や防災、メンテナンス、生活支援、アミューズメントなどの分野で人の代替として作業の効率化を目指した「サービスロボット」の2つに大きく分かれます。

 日本では、働き方改革関連法により、2020年から「時間外労働の上限規制」が適用になりました。最近では、賃金アップ率拡大の動きも活発化していますが、採用単価の上昇や人材の定着率低下により、賃金を上げても人材が確保できず、その分内部コストが膨らんでしまい、これが利益を圧迫し続ける要因となって倒産や廃業なども進んでしまうという深刻な問題が目立ってきました。

 帝国データバンクが発表した2024年の倒産件数は9901件でした。その中で見過ごすことができないのは、「人手不足」と「後継者難」による倒産が過去最多を更新してしまったことです。

近年の倒産件数推移
近年の倒産件数推移[クリックで拡大]出所:帝国データバンク

 こうした時代に生きる私たちが、豊かな生活を維持する方法の1つとして、「ロボットを活用した自動化、省人化の実現」があります。なかでも協働ロボットと働き方改革は、労働者の負担軽減と生産性向上が同時にかなうことから、非常に相性が良いといわれており、これらを組み合わせることでメリットが生まれます。

 なお、協働ロボットとは、ロボットと人が柵を隔てることなく、同じスペースを共有しながら一緒に作業できるかたちのロボットを指します。これらはリスクアセスメントに基づいて設計/製造されており、「協働運転中であること」が分かりやすいよう視覚表示がされていたり、巻き込みが起きにくい形状や、接触したときの圧力を減らすための丸みを帯びた形状をしていたり、といった特徴を持っています。

 また、協働ロボットは、単純作業や危険な作業を自動的にこなせるため、人間がその作業に付きっきりになる必要がありません。そのため、「残業をしなくても生産量を維持できる」「欠員が出てもラインが止まりにくい」といった、人手不足に強い体制を構築することも可能になります。

「ロボットフレンドリー」な環境づくりが加速

 積極的なロボットの活用は、オフィスビルや商業/宿泊施設でも見られるようになりました。ゼネコン各社も設計/施工の前にロボットの実装を念頭に置き、建物の運用や維持・管理に活躍できるよう各種設備とロボットを一元管理するITプラットフォームの検討を行っています。

 2022年に発足した「ロボットフレンドリー施設推進機構(RFA)」では、経済産業省が設置した官民連携の「ロボット実装モデル構築推進タスクフォース」をもとに、ゼネコン、ロボットメーカーとユーザー、エレベーターメーカーなどが参画。現在、ロボットフレンドリーな環境確立が加速しており、実務への落とし込みが進んでいます。


ロボットフレンドリーな環境実現の必要性[クリックで拡大]出所:経済産業省

 そもそも、ロボットフレンドリーとは、「あらゆるロボットが移動の際にバリアのない環境づくり」を指します。簡単に言えば、バリアフリーでは身体が不自由な人や高齢者が社会に参画しやすいよう、段差をなくすなど、障害になるものを取り払うことを意味していますが、この概念をロボットに置き換えたのがロボットフレンドリーなのです。

 最近では、レストランチェーンで料理やドリンクを配膳する配膳ロボットの活躍が多く見られるようになりましたが、これもロボットフレンドリーの代表例の1つです。

 少子高齢化の進む日本ですが、経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、身体が不自由な人や過疎化などで必要な商品を買いに行くことが難しい「買い物弱者」への対応の1つに「自動配送ロボット」の活用推進を強く推進しており、実証実験やロードマップ策定などに取り組んでいます。

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