“ADASの民主化”こそが重要、ボッシュが立駐特化の駐車支援システムなど披露:安全システム(1/3 ページ)
ボッシュ日本法人は、ADASの技術体験イベントを開催。公道でのレベル2自動運転や、隙間3cmに駐車する立体駐車場システムなどを披露した。
Robert Boschの日本法人であるボッシュは2025年11月28日、横浜市都筑区の本社において、同社のADAS(先進運転支援システム)に特化した技術体験イベント「Mobility Experience Days」を開催した。同イベントでは、報道陣向けにADASの事業戦略を説明するとともに、4つのデモンストレーションを披露した。
冒頭のプレゼンテーションでボッシュ ADASコンポーネント部門長 執行役員の安部大輔氏は、「技術の民主化」という視点を強調した。近年は、SDV(ソフトウェアデファインドビークル)への移行が加速している。しかし、「ハイエンドな自動運転技術は時間とコストがかかり、限られたユーザーしか享受できない」と評価した上で、「当社の役割は、市場の大多数を占めるボリュームゾーンへの価値を提供することにある」(安部氏)と、ティア1サプライヤーとしての同社の戦略を位置付けた。
本イベントで披露したのは、コスト制約の厳しい量産車市場や日本特有の道路環境に即したソリューション群である。既存のハードウェアリソースと高度なソフトウェアを融合させることで、「狭小地での駐車」や「車内の安全性確保」といった、現代のドライバーが直面する課題を解決する姿勢を鮮明にした。
自動運転レベル2のADASデモを実演
披露した技術の1つ目は、SAE(米国自動車技術会)が定める自動運転レベル2相当の運転支援を実現する「ADAS Entry-trim」だ。同技術に使われるボッシュ製のセンサーセットは、フロントとコーナー4カ所に設置するレーダーと、フロントウィンドウの上部に組み込む800万画素かつ水平120度の視野角を持つ新型カメラだ。ボッシュのデモンストレーション担当者は、「新型カメラにより、前方検知距離は従来比約2倍の250m以上に達する。加えて広角化したことにより、交差点での歩行者や隣接車線からの割り込み車両も早期に捕捉可能となった」と、認識性能の高さを強調する。
同技術は、2024年秋から東京や横浜周辺の公道でレベル2に対応する運転支援/自動運転の実証実験を実施している。
これらのセンサー情報の処理には、中国Horizon Robotics(ホライゾンロボティクス)製のSoC(システムオンチップ)を採用した。高性能なセンサーとコストパフォーマンスに優れるSoCを融合させることで「普及価格帯のADAS Entry-trim向けでありながら、従来はハイエンドとされていたシステムに匹敵する性能を実現した」(同担当者)という。
公道での試乗デモンストレーションでは、カーブ手前での予測減速制御や、渋滞時の停止保持からステアリングのタッチセンサーに触れるだけで再発進するスムーズな挙動が確認できた。また、試乗中に、死角から小型トラックが突如として割り込む場面に遭遇したが、ボッシュのドライバーが操作することなく即座に減速と停止制御を行う場面もあった。
ADAS Entry-trimの具体的な量産化時期は明かしていないが、既に自動車メーカー各社と実装に向け協議を進めている段階である。
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