NECが次世代ベクトル処理ユニットを開発へ、RISC-VやAIエンジンと融合：人工知能ニュース（1/2 ページ）
NECがHPC（高性能コンピューティング）技術のイベント「NEC HPC Forum」を開催。同社がスペインのOpenchipと共同で開発を進めている次世代ベクトル処理ユニットについて紹介した。
NECは2025年11月25日、東京都内において、HPC（高性能コンピューティング）技術のイベント「NEC HPC Forum」を開催した。2019年まで同様のイベントが「NEC C&CシステムSP研究会」という名称で毎年行われていたがコロナ禍の影響で中断しており、今回は名称を変更して6年ぶりの開催となった。
今回は、LINPACKベンチマークやTOP500ベンチマークを開発するなど世界のHPC（高性能コンピューティング）をけん引してきたテネシー大学 名誉教授のジャック・ドンガラ（Jack Dongarra）氏による「High Performance Computing Changing the World」と題した基調講演の他、理化学研究所 計算科学研究センター センター長の松岡聡氏による講演などが行われた。本稿では、NEC HPC統括部 シニアプロフェッショナルの百瀬真太郎氏が登壇した講演から、同社がスペインのOpenchipと共同で開発を進めている次世代ベクトル処理ユニット（VPU）について紹介する。
40年以上にわたってベクトル型システムを提供
1つの命令を複数のデータに同時に適用して高い性能を得るベクトル型コンピュータは、1976年にCray Researchが発売したCray-1を端緒に、長らくスーパーコンピュータの代名詞だった。日本国内でも、富士通、日立製作所およびNECの3社がベクトル型のスーパーコンピュータを開発し、2000年代半ばまで激しい性能競争を繰り広げてきた。
NECは1983年に最初のベクトル型スーパーコンピュータ「SX-2」を市場に投入。他社がベクトル型から撤退する中でも開発を続けており、その歴史は40年以上に及ぶ。
現在はPCI Expressカード型のベクトルエンジン「SX-Aurora TSUBASA」を提供中だ。JAMSTEC（海洋研究開発機構）が保有する第4世代の「地球シミュレータ」や東北大学サイバーサイエンスセンターの「AOBA」、国立地球環境研究所 地球環境研究センターの第7号機、大阪大学D3センターの「SQUID」に加え、海外ではドイツ気象局（DWD）やチェコ気象庁（CHMI）などで採用され、ベクトル型が得意とする科学技術計算や気象／海洋シミュレーションを中心に多くの成果を生み出している。
また、SX-Aurora TSUBASAは、実アプリケーションに近いとされるHPCG（High Performance Conjugate Gradients）ベンチマークにおいて、優れた性能対電力効率を示すことが実証されている。
ただし、SX-Aurora TSUBASAがリリースされたのは7年以上前の2018年2月である。その後コア数の増強などの地道なエンハンスが行われてはきたものの、世代的に古くなっていることは否めず、NECが後継エンジンを開発するかどうかが注目されていた。
RISC-VをベースにベクトルエンジンとAIエンジンを統合
そのような中2024年11月14日、スペインのOpenchipは、バルセロナスーパーコンピューティングセンター（BSC）およびNECとの協業によって、オープンアーキテクチャであるRISC-Vをベースにした新型のベクトルアクセラレータを開発すると発表※1）。およそ1年後の2025年11月13日、さらに一歩踏み込んで、OpenchipとNECとで次世代ベクトル処理ユニット（VPU）を共同開発していくことを発表した※2）。
百瀬氏は「次世代ベクトル処理ユニットはまだ検討中であり、構成や諸元などは変更される可能性がある」と前置きした上で、現時点で公表可能な情報について説明した。
まず共同開発の狙いとしては「NECが培ってきたベクトルエンジンのハードウェアおよびソフトウェアのノウハウとベクトル型が持つ高い電力効率を生かしながら、Openchipとの協業を通じて、RISC-Vアーキテクチャのスカラー性能、オープンアーキテクチャならではのエコシステムおよびAI（人工知能）機能を付加した新時代のベクトルシステムを実現することにある」（百瀬氏）という。
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