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かつて世界一を支えたNECのベクトル演算技術、いま「次世代イノベーション」を担うモノづくり最前線レポート(1/2 ページ)

同社が東京都内で開催したユーザーイベント「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2019」(2019年11月7〜8日)では、最新の「SX-Aurora TSUBASA」アーキテクチャを搭載したベクトルプロセッサなどを展示。また、2019年11月1日からはメモリ帯域を強化した新製品の受注も開始している。

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 スーパーコンピュータの性能ランキングである「TOP500」において、2002年6月から5期連続の首位を獲得した地球シミュレータ。高い理論ピーク性能と実効性能比を兼ねそろえた地球シミュレータはその登場時、欧米の計算機技術者へ衝撃を与えたとされる。

 その高性能を支えたのは、NECが誇るベクトルプロセッサだった。そして今、NECのベクトルプロセッサは科学技術計算に限らず、AI(人工知能)やビッグデータ処理性能などを強化。スーパーコンピュータからデスクトップまで利用可能な「次世代イノベーションプラットフォーム」として脈々と受け継がれている。

 同社が東京都内で開催したユーザーイベント「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2019」(2019年11月7〜8日)では、最新の「SX-Aurora TSUBASA」アーキテクチャを搭載したベクトルプロセッサなどを展示。また、同年11月1日からはメモリ帯域を強化した新製品の受注も開始している。


最新の「SX-Aurora TSUBASA」アーキテクチャを搭載したベクトルエンジン(クリックで拡大)

x86ノードにベクトルプロセッサを搭載、Linux採用で使い勝手も向上

 2017年10月に発表された「SX-Aurora TSUBASA」アーキテクチャは、ベクトルプロセッサの高速性能とx86アーキテクチャの使い勝手を融合したHPC(High Perfomance Computing)ソリューション。ベクトルプロセッサをPCI Expressカードに搭載した「ベクトルエンジン(VE)」と、x86 CPU(Intel Xeon スケーラブル・プロセッサ)を搭載し主にOS処理を行う「ベクトルホスト(VH)」を組み合わせた構成だ。

 1989年に登場した「SX-3」から前世代の「SX-ACE」までOSは専用UNIXを用いていたが、SX-Aurora TSUBASAではx86/Linuxを採用。最新モデルではRed Hat Enterprise Linux、もしくはCentOSをサポートする。ライブラリやツール、周辺装置ドライバなどLinuxの既存資産を活用でき、利用シーンの拡大に貢献している。


SX-Aurora TSUBASAアーキテクチャの概要(クリックで拡大) 出典:NEC

 同アーキテクチャは計算ノードにGPUなどを搭載するアクセラレータ型システムと構成が似ているが、性能や開発の容易さの面で優位に立つとNECは説明する。

 アクセラレータ型システムではCPUで実行するホストプログラムからアクセラレータで処理する関数を呼び出すことが一般的だ。このとき、CPUとアクセラレータの間で逐次データ転送を行うため、演算性能にボトルネックが生じてしまう。これに対して、SX-Aurora TSUBASAでは、VEで処理するプログラムを丸ごとVE側メモリに展開するため、CPUとの通信によるボトルネックが発生しにくいという特徴がある。複数のVEを搭載するモデルではVE同士がCPUを介さず直接通信できるという。

 また、SX-Aurora TSUBASAはアプリケーションをVEで実行中であっても、CPUへの負荷がほぼ発生しない。よって、ベクトル性能が求められるアプリケーションをVEで処理しつつ、スカラー向けx86アプリケーションをVHで実行するといったワークロードも可能だ。

 開発面では、アクセラレータ型システムで必要だった専用言語の利用やソースコード修正を必要としないことがメリットとなる。NECが提供する自動ベクトル化、自動並列化機能を備えたコンパイラで従来プログラムをコンパイルことで、VEの性能を引き出すバイナリが作成できるという。言語はC、C++、Fortranに対応し、BLAS、FFTW、LAPACK、ScaLAPACKなど最適化された科学技術計算ライブラリも提供されている。

アクセラレータ型システムとSX-Aurora TSUBASAアーキテクチャの比較(クリックで拡大) 出典:NEC

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