なぜ業界固有業務でのAI活用がうまくいかないのか、重要な「文脈」の存在:製造マネジメント インタビュー(1/2 ページ)
業界固有業務ではAI活用の適用に苦しむ企業が多いが、その中で業界特化型AIエージェントの展開を発表したインフォアはどのような勝算を描いているのだろうか。インフォアジャパン ソリューションコンサルティング本部長の佐藤幸樹氏に話を聞いた。
業界特化型クラウドを展開する米国Infor(インフォア)は2025年10月に業界特化型AI(人工知能)エージェントを発表した。ChatGPTをはじめ生成AIの登場により、一般業務でのAI活用は進んでいるものの、業界や産業固有の業務では回答精度や信頼性の問題から、浸透が進んでいない。その中でインフォアはどのような勝算を描いているのだろうか。インフォアジャパン ソリューションコンサルティング本部長の佐藤幸樹氏に話を聞いた。
DXプロジェクトで期待通りの成果を得ているのは30%
McKinsey & Companyの調査によると、75%の組織が、DX(デジタルトランスフォーメーション)やAIに関するプロジェクトにより「今後3年間で20%以上の生産性向上」を期待しているという。一方で、その期待に応えられたDXプロジェクトは30%にとどまっており、期待と現実に大きなギャップが生まれている。佐藤氏は「全てのプロジェクトは最終的にビジネス価値をどう生み出すかが重要であるにもかかわらず、プロジェクトの内容をうまくビジネス価値に転換できていないケースが多い」と問題点について指摘する。
実際に生成AIなどのプロジェクトでも、一般業務における文書作成や要約など個人業務の効率化についての成果は多く生み出している。一方で業務フローに組み込んだ「組織ベースの業務」については、信頼性の問題などによるチェック工程の整備などを含め、なかなか大きな成果に結び付けられない状況が見られている。
佐藤氏は生成AIプロジェクトの成功のカギについて重要なポイントとして「ワークフローへの深い理解」を挙げる。
「同じ購買業務といっても、業界ごとにプロセスは大きく異なる。例えば、請求書の受領についても、自動車部品メーカーであれば、自動車メーカーからEDI(電子データ交換)で自動で飛ぶ形になるが、食品や飲料メーカーでは請求書を作成して飛ばす必要がある。そういう固有のプロセスを理解していなければ、AIを活用していても正しい回答を出すことはできない」と佐藤氏は語る。
業界固有の知見を持つインフォアの強み
こうした背景に対し、インフォアは以前から業界に特化したデータの活用を訴求し、それに伴うテンプレートなどを用意してきた。業界固有の価値やワークフローを踏まえたデータを基にAIを活用することができるために、専門業務でも正しい文脈で正確な回答を得られやすいという強みを訴える。
「インフォアは業界特化型クラウドプラットフォームとして、業界特有のプロセスに適合したデータ活用を推進してきた。また、それを支援する業界ごとのベストプラクティスなども用意し、どのような価値を実現するのかというバリューマップも準備している。業界特有のワークフローや、それぞれの工程が求めている『価値』を理解していることが強みだ」と佐藤氏は述べる。
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