REDサイバーセキュリティ規制の全貌 新時代の無線セキュリティ対策要件:産業制御システムのセキュリティ(3/3 ページ)
今、グローバルでサイバーセキュリティへの規制強化の波が高まっている。本稿では、欧州におけるRED(無線機器指令)の新サイバーセキュリティ対策要件の内容と導入の背景、産業分野における影響、そして実務的な対応のポイントを、産業用無線機器メーカーとしての経験に基づき解説する。
非順守のリスク
2025年8月1日以降、この要件を満たさない製品はEU市場での販売が不可能となる。各EU加盟国に設置された市場監視当局(Market Surveillance Authorities, MSA)がこれを常時に監督し、不適合製品に対しては販売停止命令やリコール措置を執行する。加えて、EU入国時の通関差し止めによるサプライチェーン混乱などが挙げられる。
さらに、保険適用除外や取引先との契約解除、消費者信頼失墜などといった長期的な影響も懸念される。
そのため、当社は早期に認証取得に取り組み、市場継続性の確保だけでなく、競争優位性の獲得にもつながっている。実際に、EU向けソリューションを輸出する大手企業から、対応に関する問い合わせを受けている。
こうした先行投資が、REDサイバー対策要件(EN 18031)への迅速な整合と、将来のCRAを見据えたライフサイクル運用にも寄与する。
まとめ
RED-DAは無線機器業界における新たなベースラインであり、2025年8月1日以降は適合が取引の前提となる。これは単なる順法対応にとどまらず、調達要件/監査対応/ブランド信頼/サプライチェーンの継続性に直結する経営上の投資と位置付けたい。
現に、Moxaは産業界のデジタルトランスフォーメーションが加速するなか、「セキュリティは製品/ソリューションの一部である」との理念の元、開発段階からセキュリティを組み込んだ結果の一環でREDのセキュリティ対策要件へ適合した。
デジタル要素を含む機器全般のライフサイクル責務を定めるサイバーレジリエンス法(CRA)の動向も踏まえれば、IEC 62443などと整合した設計/運用を早期に体制化することはリスク低減のみならず、市場機会の拡大と長期的な競争力の確保にもつながるだろう。これにより、同社製品は産業現場における安全かつ安定した運用に寄与する。
著者紹介
石橋 茜(いしばし あかね)
Moxa Japan プロダクトマーケティング部
機械工学の大学院修了後、航空機業界/自動車業界でエンジニアとして勤務したのち、Moxa Japanに入社。現在は産業用無線、産業用PC、シリアル通信機器を中心に製品戦略と技術提案を担当している。また、ベンチプレス競技でも世界選手権優勝の実績を持つ。
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