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おもちゃ化から始めるモノづくり――ICOMAの独自メソッドで生まれた「tatamo!」ITmedia Virtual EXPO 2025夏 講演レポート(1/2 ページ)

折り畳み式電動バイク「TATAMEL BIKE」のICOMAが「ITmedia Virtual EXPO 2025夏」で講演。金型レス設計や余白を生かしたデザインのメリット、次世代コンセプトモデルの「tatamo!」にも用いられた独自メソッド「TOYBOX」の特長などを紹介した。

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 アイティメディアが運営する産業向けメディアのMONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、Tech Factoryは、2025年8月26日〜9月26日の約1カ月間、国内最大級のオンラインイベント「ITmedia Virtual EXPO 2025夏」を開催した。

 本稿では「おもちゃから広がるミライ、ICOMAの乗り物づくり」をテーマに、メカ設計ゾーンの基調講演に登壇したICOMA 代表取締役社長 兼 プロダクトデザイナーの生駒崇光氏による講演内容の一部を紹介する。

“ロボット×モビリティ×おもちゃ”の実現に向けて

ICOMA 代表取締役社長 兼 プロダクトデザイナーの生駒崇光氏
ICOMA 代表取締役社長 兼 プロダクトデザイナーの生駒崇光氏 出所:ICOMA

 ICOMAは2021年3月に創業したハードウェアスタートアップである。創業者で代表の生駒氏は、玩具の開発をキャリアの出発点とし、その後は家電製品や家族型ロボットの開発など幅広い分野に携わってきた。コンパクトに畳める電動バイク「TATAMEL BIKE」のアイデアを得たことを機に、起業へと踏み切った。

 現在は“ロボット×モビリティ×おもちゃ”を体現する新たなコンセプト「tatamo!」の実現を目指している。講演では、製品化に成功したTATAMEL BIKEの開発経緯とそこで得られた知見、さらにtatamo!に込めた思いや目指す未来について語られた。

バイク形状から箱型に畳める電動バイク「TATAMEL BIKE」
バイク形状から箱型に畳める電動バイク「TATAMEL BIKE」[クリックで拡大] 出所:ICOMA

 TATAMEL BIKEは、バイクの形状から箱型に畳める“ギミック”を備えた電動バイクである。自宅やオフィスの玄関先、デスクサイドにも収まる省スペース設計により、駐車場を確保しにくい都市部でも安心して利用できる。このユニークで遊び心にあふれたプロダクトは海外でも高い評価を得ている。

 アイデアの着想は2016年にさかのぼり、2020年にプロトタイプ初号機を製作。その後、約7回の設計見直しを経て、2024年7月に量産を開始し、念願の市販にこぎ着けた。

「TATAMEL BIKE」のアイデア着想から量産化までの変遷
「TATAMEL BIKE」のアイデア着想から量産化までの変遷[クリックで拡大] 出所:ICOMA

金型レス設計と「余白」の発想

 生駒氏は「TATAMEL BIKEを実現する上で重要だったのは『金型レス設計』と『余白のあるデザイン』の2点である」と説明した。

「TATAMEL BIKE」を実現する上で重要となった2つの工夫
「TATAMEL BIKE」を実現する上で重要となった2つの工夫[クリックで拡大] 出所:ICOMA

 通常、新規モビリティの開発には多額のコストがかかる。スタートアップにとって大量生産(金型を前提とした生産)のアプローチを採ることは難しい。そこで同氏は、板金加工や3Dプリントを活用し、限られた予算で金型を使わない設計(金型レス設計)に挑戦。バイクのフレーム部の板金製造は東京・大田区の町工場との連携で実現した。

 さらに、余白を残すデザインを取り入れ、ユーザー参加型のプロダクトに仕立てた。広いサイドパネル部分を自由にカスタマイズできるようにしたことで、写真やイラストを施すユーザーが現れ、ファン同士の交流も生まれた。その結果、TATAMEL BIKEは単なる製品にとどまらず、“ユーザー発信のものづくりコンテンツ”としての役割も担い、市場での話題性を一層高めていったという。

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