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「自動化の成果をどう評価すれば……」知っておきたい“3”という数字の使い方中堅中小製造業の自動化 虎の巻(2)(2/3 ページ)

本連載では、自動化に初めて取り組む中堅中小企業の製造現場向けに協働ロボット、外観検査機器、無人搬送機にフォーカスして、自動化を成功させるための導入前(準備)、導入時(立ち上げ)、導入後(運用)におけるポイントを解説する。今回は、生産性向上について、そのポイントと評価の基準などについて具体的な数値を含めて説明する。

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ロボット導入のポイント

 前回「自動化の段階的な導入の流れ」で記述したように、昨今のAIの進展により、今後ロボットシステムなどの関連技術が向上し、これまでロボットでできなかったことも時代と共にできるようになる可能性がある。

 自動化やロボットの活用は、まずは導入できるところ、技術的ハードルの低いところ(工程)から段階的に始めるのが基本である。

 ユーザーの期待値が大きいロボットだが、まだまだできないことの方が多いため、最初から無理して多額の費用をかける必要はない。可能な範囲で始めることが重要だ。

 ユーザーもSIerもロボット導入時は試行錯誤しながら取り組むことになる。まずは現場がロボットの扱いに慣れ、成功体験(ロボット導入の意義や納得感)を得ることができれば、経営者や現場担当者も自信を持つことができる。

 小さな成功体験を積み重ねることで、他のラインなどへのロボット導入の機運が醸成され、人と機械との協調作業のハードルも徐々に下がっていくだろう。

ロボット導入の評価:現場に必要なのは数値

 では、自動化機器やロボットの導入を検討する際、導入した場合の「評価」はどのようにすればいいのか。

 外観検査機器やロボット(関連周辺機器やシステム設計含む)導入には、少なくない金額を投じることになる。ロボット導入が将来の会社の命運を左右すると意気込む中小企業だってあるだろう。そのため、導入する前に必ず「評価基準」を作っておく必要がある。

 導入後も事前の評価基準通り、あるいはそれ以上の成果が上がっているかどうか検証する――。それがあって初めて、他のラインにロボット導入を検討する材料となる。

 前回記述したように、ロボット導入は生産性の向上や夜間稼働の実現、品質の均一化など生産面や品質面の効果、効能だけでなく、他社との差別化による新規営業先の開拓や優秀な人材の確保につながるなどの間接的な「副次的な効果/効能」が期待できる。

 しかし、中堅中小企業の製造現場は、多品種少量生産での単価数円を巡る製品の納品に日々追われ、どうしても数値による現状との比較優位、もしくは実務上の具体的な効果や成果が期待されてしまう。

 例え現場責任者がロボット導入の必要性を経営者に訴えたとしても、「必要性はわかった。それでは一体どのくらいの効果や効能があるのか数字で出してほしい」という返事が必ず出てくるだろう。

 その場合、何らかの形で少なくとも現状との比較優位性を数字で示す必要がある。

 当然、ロボットメーカーやその代理店、SIerは人の作業と比較した場合の数値は持っており、プレゼンなどで説明はする。しかし、経営者が重視するのはあくまで現状との比較であり、該当現場に導入した場合の具体的な数字だ。

 例えば、A地点からB地点に重量物を人間が運んでいる工程があり、それを無人搬送機で代替したいと考えた場合、具体的な数値として評価するにはどうすればいいだろうか。

 カメラ映像を基に一定の時間当たりに何人が何往復しているかなどを分析し、その作業を無人搬送機に替えたらどのように変わるかを一定期間調べることで、時間当たりの人件費と無人搬送機を導入した場合のコスト比較ができる。

 この場合重要なのは、あくまで定量的数値であり、定性的、感性的な事柄(作業者の負荷軽減や労力の低減など)は考慮しないことだ。製造現場は日々の納品に1円単位で取り組んでいる。経営者を説得するには数値目標が必要になる。

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