核融合発電の基礎と開発の最前線――未来エネルギーを支える技術と素材とは:ITmedia Virtual EXPO 2025 夏 講演レポート(1/3 ページ)
「ITmedia Virtual EXPO 2025 夏」において、自然科学研究機構 核融合科学研究所/総合研究大学院大学の高畑一也氏が「核融合発電の基礎と開発の最前線−未来エネルギーを支える技術と素材」と題して行った講演から抜粋して紹介する。
アイティメディアにおける産業向けメディアのMONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、Tech Factoryは2025年8月26日〜9月26日、製造業向けの国内最大級のオンラインイベントである「ITmedia Virtual EXPO 2025 夏」(主催:ITmedia Virtual EXPO 実行委員会)を開催した。
ここでは「核融合発電の基礎と開発の最前線−未来エネルギーを支える技術と素材」と題して自然科学研究機構 核融合科学研究所/総合研究大学院大学の高畑一也氏が行った基調講演の一部を紹介する。カーボンニュートラル実現の切り札として注目される核融合発電(フュージョンエネルギー)は、今まさに実用化に向けて技術開発が加速している。講演では、核融合発電の基本的な原理や装置の仕組み、技術的課題などを解説した。
核分裂と核融合の違い
高畑氏はまず、核融合発電について「1gの水素燃料で石油8トン(t)分のエネルギーが発生する」と非常に少ない燃料で大きなエネルギーを得ることが可能であり、しかも「化石燃料が枯渇しても天然に豊富に存在する燃料でエネルギーを賄うことができる」とそのメリットを紹介した。
核エネルギーを発生させる方法は2種類ある。1つは核分裂だ。原子力発電所に利用されており、世界で430基が稼働している。核分裂は重たい原子核であるウラン、プルトニウムなどに中性子が当たり2つに分裂する時にエネルギーが発生する。
一方、核融合は、核融合発電に利用されようとしているがまだ実用化に至っておらず、現在研究開発中である。太陽など恒星が輝いているのは核融合によるものである。軽い原子核である水素(またはその同位体)が2つ融合して少し重たいヘリウムなどに変わる時にエネルギーが発生する。連鎖反応ではなく、原理的に暴走せず、さらに反応灰のヘリウムは無害で環境に影響を与えないという特長がある。
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