ウエスタンデジタルは2027年下期にHAMR方式へ移行、日本の活動重視し大型投資も:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
ウエスタンデジタル CEOのアーヴィン・タン氏が事業戦略について説明。大容量化などHDDの技術開発を加速するため、神奈川県藤沢市にある同社拠点をはじめ日本において5年間で10億米ドルを投資する計画である。
米国ウエスタンデジタル(Western Digital)は2025年10月1日、東京都内で会見を開き、来日した同社 CEOのアーヴィン・タン(Irving Tan)氏が事業戦略について説明した。大容量化などHDDの技術開発を加速するため、神奈川県藤沢市にある同社拠点をはじめ日本において5年間で10億米ドル(約1470億円)を投資する計画である。
ウエスタンデジタルは2025年2月、NANDフラッシュメモリ事業を手掛けるサンディスク(Sandisk)をスピンオフ上場しており、現在はHDD専業メーカーとなっている。同月にCEOに就任してから初来日となるタン氏は「日本は当社の研究開発拠点があるだけでなく、産業オートメーションでも高い技術を有している企業が多いことも含めて重要だと考えている。新たなジャパンカントリーオフィサーに就任した高野(公史氏)は、日本での活動について私に直接レポートする体制になっており、今後は日本のパートナーやサプライヤーと強固な関係を構築していきたいと考えている」と語る。
1970年に創業したウエスタンデジタルは、PCなどB2Cの電子機器向けHDDを中核に事業成長を遂げた。「その後に長い年月をかけて強化してきたデータセンター向けHDDが、今では売上高の90%を占めるようになっている」(タン氏)という。
足元ではAIデータセンターへの投資が急速に拡大しており、人だけでなく機械やAI自身から生成される膨大な量のデータを集積するストレージの需要も拡大している。タン氏は「データはまさに新しい原油だ。2030年にはデータ量は現在の3倍まで増えるという調査もある。そしてHDDがデータセンターのストレージにおける中心的な役割を果たしていく」と説明する。
データセンターのストレージとしてはHDDの他にも、NANDフラッシュメモリをベースとするSSDやテープメディアなども存在する。タン氏は、現在のデータセンターのストレージのうち8割がHDD、1割がSSD、1割がテープであり、5年後の2030年も同じ割合で推移するというIDCの調査結果を紹介した。そして、HDDが選ばれ続ける理由として、高い耐久性と信頼性、最適なTCO(総所有コスト)、大容量化のロードマップを挙げた。「大容量化でいうと、当社のHDD1台当たりの最大容量は3年前の2022年は18TBだったが、現在は32TBになっている。そして2026年前半に36TB、2027年後半には44TBまで増やす計画だ」(タン氏)。
なお、2026年の容量36TBのHDDは現行のePMR(エネルギーアシスト垂直磁気記録)を採用するが、2027年の容量44TBからは次世代技術のHAMR(熱アシスト磁気記録)に移行する方針である。タン氏は「技術としてのHAMRの開発は既に完了している。当社として重視しているのは、顧客が求めている高い耐久性と品質、信頼性をHAMRで確保するとともに、四半期に100万台のレベルで量産できるようにすることだ」と強調する。
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