生成AIが“真のデジタルツイン”のカギに、モノづくりプロセスはどう変わる?:デジタルツイン×産業メタバースの衝撃(7)(1/3 ページ)
本連載では、「デジタルツイン×産業メタバースの衝撃」をタイトルとして、拙著の内容に触れながら、デジタルツインとの融合で実装が進む、産業分野におけるメタバースの構造変化を解説していく。第7回となる今回は、生成AIおよびフィジカルAIの進化と、モノづくりプロセスの変化について解説する。
連載概要と本記事の位置付け
本連載では、「デジタルツインとの融合で実装が進む産業メタバース」をタイトルに連載として、拙著『メタ産業革命〜メタバース×デジタルツインがビジネスを変える〜』(日経BP)の内容にも触れながら、本連載向けに新たに追加する内容を含めて、産業分野におけるデジタルツインとの融合により実装が進む産業分野におけるメタバースの構造変化について解説していく。
AI時代においても共通の産業コンセプトである「CPS」
最近では生成AIやAIエージェント、フィジカルAIなど、AI(人工知能)に関する新たなコンセプトが生まれているが、産業として目指すDX(デジタルトランスフォーメーション)の在り方が大きく変化しているわけではない。
これらのAI関連技術の進展により、技術的な制約で実現できなかった部分や多くのリソースや大規模予算が投下できる企業に限られていたものがより民主化し、描かれていたコンセプトが実現しやすくなっていると見ることができる。その中で、より「How」である「技術としてどう実現するか」よりも、「What」である「何を実現したいのか」「どんなオペレーションやビジネスを実施したいのか」が重要になってきている。
産業コンセプトとして共通なのは、インダストリー4.0のコンセプト以降、CPS(サイバーフィジカルシステム)であり、産業メタバース×デジタルツインであった。現実空間とデジタル空間を密接にリンクし、可視化、シミュレーション、最適化を図るコンセプトだ。生成AIや、AIエージェントが生まれた今もその構造は変わっていない。
産業メタバース×デジタルツインの課題
ただし、デジタルと現実空間をつなぐCPS(産業メタバース×デジタルツイン)において、生成AIやフィジカルAIは停滞を打破する大きな力となりそうだ。
CPSやデジタルツインのコンセプトが示されてから長い時間がたっているが、ここまでのところ思い描いた形を実現できているとは言い難い。現状を見ると、デジタル上で検討したものを、現実空間で実現を図る「エンジニアリング段階」での活用にとどまっており、本来の意味での「ツイン」として、現実世界のデータをデジタル空間に戻し、さらにそれを現実世界にフィードバックする循環ができていなかったのが現状だ。真のツインになりきれていなかったのだ。
また、デジタルでの検討結果を現実世界にフィードバックさせる接点としてのロボットや機器も、動作は都度インテグレーションが必要となり、フレキシブルにデジタル上での変化に合わせて現実世界で変化させることは難しかった。
従来のCPSの課題として考えられる点は、下記の通りだ。デジタルと現場をつなぐコンセプトとしては存在していたものの、完全にはつながっていなかったことが分かる。
主な従来のCPSの課題:デジタルと現実がつながっていない
- 【現実】人作業はデジタル化しづらく暗黙知化しデジタルに接続していない
- 【現実】膨大なデータを処理しきれずIoT(モノのインターネット)データがデジタルに接続していない
- 【現実】ロボットがフレキシブルに動作調整をできずデジタル上での検討とシームレスにつながらない
- 【現実】ロボットの学習やSI(システムインテグレーション)に負荷がかかる
- 【CPS】CPS、3Dモデルの設計に負荷がかかる
- 【CPS】CPSやデジタルツールが細分化しデータがつながっていない
- 【CPS-上位システム】細分化するシステムの情報を処理しきれない
- 【CPS-上位システム】シミュレーション結果を各システムに連携できない
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