脱炭素は「高価」の常識を変える、LIXILが価格据え置きでCO2半減アルミを標準品に:リサイクルニュース(1/2 ページ)
LIXILが、新地金のみで作られた場合と比べてCO2排出量を約50%削減できるアルミを、2025年10月から価格据え置きで標準品としてアルミ形材製品に展開する。この取り組みは「環境に良いものは高価」という常識を打ち破るか。
LIXILは2025年9月17日、オンラインで記者会見を開き、アルミ新地金のみで製造した場合と比較してCO2排出量を約50%減らせる循環型低炭素アルミ「PremiAL」を、標準品として価格据え置きでアルミ形材製品に展開すると発表した。対象製品は、LIXILが製造するアルミ形材を使用している全製品で、2025年10月から順次展開する。
期待の声に応え、標準品化
国内外における全CO2排出量のうち建築/建設分野が37%を占めるといわれている。建築物の資材調達から解体/廃棄に至るまでのライフサイクル全体で排出されるCO2排出量「ホールライフカーボン」は、「エンボディドカーボン」と「オペレーショナルカーボン」で構成される。
エンボディドカーボンは、資材製造、施工、使用(資材関係)、解体の段階で生じるCO2排出量を指し、資材製造と施工の段階で排出されるCO2は「アップフロントカーボン」と呼称されている。ホールライフサイクルカーボンのうち、エンボディドカーボンとオペレーショナルカーボンが占める割合はいずれも約50%だ。
これらの状況を踏まえて、日本政府は建築物のホールライフカーボンの算出/開示義務化に向けて、制度の検討を進めている。2026年に通常国会に関連法案が提出される予定だ。
LIXILでも、エンボディドカーボンとオペレーショナルカーボンの削減に向けた取り組みを推進。エンボディドカーボン削減の取り組みの1つとしてアルミのリサイクルを展開している。
一方、軽量で加工性が高いアルミは、国内外で需要が拡大している。特に建築/構造物が需要をけん引するとともに、輸送機器関連でもニーズが高まっている。
また、日本アルミニウム協会は2025年6月にグリーンアルミの定義を定め、低炭素製品への取り組みを一層強化している。アルミ製品の環境負荷を減らすためにポイントとなるのが、新地金を使用しないリサイクルアルミの活用だ。アルミは他の金属と比べると融点が低いため、少ないエネルギーで溶解して再資源化できる。アルミ製品の原材料を、新地金からリサイクル材に置き換えることで、CO2排出量を97%減らせる。
そこで、LIXILはアルミスクラップの調達ルートの構築とリサイクル技術を確立した。これらを生かして、新地金と同品質のリサイクルアルミの開発にも成功している。2022年には、アルミリサイクル技術を活用し、リサイクルアルミ使用比率70%の「PremiAL R70」を、2023年には同100%の「PremiAL R100」を、非住宅中心に一部対象製品で展開を開始した。LIXIL 執行役専務 LIXIL Housing Technology担当の吉田聡氏は「当社は日本で初めて、リサイクルアルミ使用比率100%のビレット量産化を実現した」と述べた。
PremiALシリーズはこれまでに、建築物のホールカーボン削減を目指すさまざまな企業(住友林業、大成建設グループ、日鉄興和不動産、セブンイレブンなど)に採用されている。
加えて、PremiALシリーズの展開により、欧州基準の厳しいCO2排出基準を満たす「Low Carbon Profile」の東南アジア初現地サプライヤーに選ばれた他、サステナブルなビジネスにおけるリーダーシップを表彰する「Reuters Sustainability Awards 2025」のCircularity部門においてファイナリスト13社のうちの1社に選出された。
「『ビル向け製品のみならず住宅向け製品への展開拡大』『供給量の拡大と求めやすい価格』『環境価値を定量化する第三者からの評価が全製品で使用可能』といった期待の声に応えていくことが使命と考え、当社のアルミ形材製品に価格据え置きでPremiALを標準展開することに踏み切った」(吉田氏)
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