10年先に向けたスズキの技術戦略、「100kg軽量化」にめど:電動化(1/2 ページ)
スズキは10年先に向けた技術開発についてまとめた「技術戦略2025」を発表した。2024年に発表した技術戦略の進捗を明らかにした他、CO2を回収/活用する「カーボンネガティブ」に取り組む方針を示した。
スズキは2025年9月9日、10年先に向けた技術開発についてまとめた「技術戦略2025」を発表した。2024年に発表した技術戦略の進捗を明らかにした他、CO2を回収/活用する「カーボンネガティブ」に取り組む方針を示した。また、移動の本質的な価値を見つめ直してクルマづくりに生かす「本質価値の極大化」も目指す。
2024年に発表した技術戦略では、「軽くて安全な車体」「内燃機関の高効率化」「必要最小限の電池容量による電動化」「必要十分な機能によるSDV」「サーキュラーエコノミー」に取り組むと説明した。
車体の軽量化に関しては、「アルト」の次期モデルで2021年発表の9代目アルトから空車重量で100kgの軽量化を目指すとしていた。9代目アルトの空車重量は680kgだ。初代や3代目など過去のアルトを研究し、四輪車だけでなく二輪車や船外機など部門を超えてアイデアを出し合いながら、80kgの軽量化案にめどをつけた。部品の軽量化で50kg、構造の進化で20kg、仕様の見直しで10kgを削減した。
今後は部品1つ1つまで全体最適で無駄をそぎ落としながら、100kgの軽量化を達成する。この「Sライトプロジェクト」を通じて確立した技術は、2030年手前までに先行開発車として完成させ、軽自動車から商品化していく。A、B、Cセグメントにも順次展開する。部品レベルでは確立した軽量化技術は2030年を待たずに順次採用していく。
内燃機関の高効率化に向けて取り組む「スーパーエネチャージ」は先行開発中で、燃費改善目標の達成にめどをつけたという。スーパーエネチャージは電源電圧48Vのマイルドハイブリッドシステムで、軽自動車向けの電源電圧12Vのマイルドハイブリッドシステム(モーター出力2kW)をベースに、モーター出力を向上させながらバッテリーは最小限にする。シリーズハイブリッドシステムの開発も進んでいる。
高速燃焼や高圧縮比化、ミラーサイクルなどの燃焼効率向上にも取り組む。自然吸気、直噴ターボともにエンジンの開発を継続し、ハイブリッド車(HEV)専用の「DHE(Dedicated Hybrid Engine)」の開発や、バイオ燃料への対応も進める。小さいクルマにはスーパーエネチャージを、上の車格にはシリーズHEVからプラグインハイブリッド車(PHEV)までを用意する。
内燃機関に関連して、カーボンニュートラル燃料対応モデルはインドで投入を開始した。バイオエタノールによる「E20(エタノール20%混合ガソリン)」には二輪車、四輪車ともに全モデルが対応済みで、二輪車ではエタノール85%まで対応したFFV(フレックス燃料車)の量産も開始した。四輪車のFFVは2025年度中に投入する。2025年発売予定の「ビクトリス」のCNG仕様では、荷室にあったタンクを床下に移動させ、CNG車の使い勝手を高めた。クルマ作りにおいてもバイオガス普及を意識している。
カーボンニュートラル燃料の活用では鈴鹿8時間耐久ロードレースに参戦した。100%サステナブル燃料を使用するとともに、マシンのタイヤやオイル、カウル、ブレーキにサステナブルな材料を採用した。カーボンニュートラルの推進だけでなく、トップ争いのチームとそん色ないラップタイムを記録したとしている。
インドにいる3億頭の牛のふんを活用したバイオガスや有機肥料の製造では、インドの酪農組合と協力してバイオガスの生産プラントを建設しており、2025年から順次稼働させる。バイオガスはインドで普及しているCNG車でそのまま使用でき、カーボンニュートラル燃料の利用拡大が図れる。牛のふんを買い取ることで農村の所得向上につなげる他、インド政府が目指すエネルギーや肥料の自給自足にも貢献するとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.