UWBの新たなキラーアプリは自動車、デジタルキーに加え子どもの車内放置検知も:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
米国半導体メーカーであるQorvoがUWB(Ultra-Wideband)ソリューションについて説明。足元で高級車を中心にデジタルキーへのUWBの採用が広がっており、子どもの車内放置検知システムへの適用も検討が進みつつあるという。
米国半導体メーカーであるQorvoは2025年9月4日、東京都内で会見を開き、同社のUWB(Ultra-Wideband)ソリューションについて説明した。足元で高級車を中心にデジタルキーへのUWBの採用が広がっており、子どもの車内放置検知システム(CPD:Child Presence Detection)への適用も検討が進みつつあるという。
Qorvoは無線通信用のRFICや電源管理ICなどを展開しているアナログ半導体メーカーだ。売上高規模は37億米ドル(約5400億円)で、年間に80億個のデバイスを出荷している。
3.1G〜10.6GHzにわたる広帯域を用いることから超広帯域無線と呼ばれるUWBについても、QorvoはRFICを供給するなどパイオニアとして活動してきた。Qorvo カントリーマネージャー、日本の大久保喜司氏は「近年は大手スマートフォンメーカーがUWBを採用しておりスマートタグなどとの通信に活用している。これを起点に、スマートフォンと無線通信で接続する手法として今後浸透が進んで行くだろう」と語る。
UWBを用いてスマートフォンと無線通信で接続するアプリケーションの代表例が自動車のデジタルキーだ。現在デジタルキーの無線通信ではBluetooth Low Energy(BLE)が一般的に用いられているが、近年急増している自動車から離れた位置にあるキーフォブやスマートフォンの電波を中継してドアを開けてエンジンを始動させる「リレーアタック」による盗難への対応が難しい。UWBを用いたデジタルキーは、トリガーとしてBLEを用いるものの、その後でUWBによりスマートフォンと自動車の距離を正確に測定することでリレーアタックに対応できるとされており採用が進んでいるのだ。
自動車におけるUWBのもう一つのアプリケーションがCPD向けのレーダーだ。欧州の自動車アセスメントであるEuroNCAPはCPDを要件に加える方針であり、米国でもCPD対応が法規制に盛り込まれる方向性になっている。現在、CPDのセンサーとしてはカメラや60GHz帯のミリ波レーダーなどが検討されているが、カメラは子どもを検知できない場合があり、60GHz帯ミリ波レーダーは中国で利用できない周波数帯域であることが課題だ。UWBは検知精度が高く、中国内での利用にも制限がないことから有力候補になっている。大久保氏は「日本のティア1サプライヤーのラボで当社の製品を用いたCPDの実証を行ったところ、3列目シートに置いた子どものダミー人形もしっかり検知できた」と強調する。
自動車以外でも、スマートロック版Matterといわれる「Aliro」や、シスコシステムズ、ジュニパーネットワークスなどの業務用無線LANアクセスポイントのアセットトラッキングや室内ナビゲーションの機能にUWBが採用されている。また、工場への導入が進むAGV(無人搬送車)やAMR(自律搬送ロボット)のRTLS(位置測位技術測位)向けの検討も進んでいるという。
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