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生成AI需要を捉えたパナソニック エナジーのESS事業、売上高が年率70%で成長中イノベーションのレシピ(2/3 ページ)

パナソニック エナジーが、パナソニックグループが注力する「ソリューション領域」に当たるエナジーストレージシステム(ESS)の事業戦略について説明。AIデータセンター向けの需要が急拡大する中で、ESS事業の売上高は2023〜2025年度の3年間で年平均成長率70%以上に達する勢いになっている。

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顧客のニーズを把握して“軽く早く”開発

 AIデータセンター向けのバックアップ電源は、NVIDIAが毎年のように性能向上に努めているGPUの消費電力の増加に伴い課題が多様化している状況にある。

 GPUの消費電力は、2018年発表のアーキテクチャ「Turing」で300W、その次世代に当たる「Ampere」でも400Wにとどまっていた。この時点においてデータセンターの顧客が求めていたのは、安全かつ高出力の電力を供給する分散型バックアップ電源であり、パナソニック エナジーのESS事業としては確実なバックアップを実現するBBUの提供に主眼を置いていた。

GPUのアーキテクチャ進化と消費電力の増加、AIデータセンター顧客の課題の推移
GPUのアーキテクチャ進化と消費電力の増加、AIデータセンター顧客の課題の推移[クリックで拡大] 出所:パナソニック エナジー

 しかし、2022年11月に登場したChatGPTに代表される生成AIの登場を受け、AIデータセンターはさらなるAI処理能力を求めた。2022年3月にNVIDIAが発表していたGPUアーキテクチャ「Hopper」は、生成AIの基盤となるトランスフォーマーモデル高効率に処理できることを特徴とする一方で消費電力も大幅に上がった。そして、このHopperをAIデータセンターに導入する上で顧客が要求したのはピーク電力の削減とインフラ設備投資の削減だった。

 ESS事業ではこの要求に合わせて、BBUから供給する電力をより高いピーク電力にも対応できるようにするDC-DCコンバーターと一体化したDCDC内蔵BBUを開発し、2025年から市場投入を開始している。さらに、顧客のインフラ設備投資削減の要求にも対応すべく、PMI/PMM(電源監視インタフェース/モジュール)や、電源装置の土台となる電源シェルフなども併せて供給できる体制を整えた。加藤氏は「トップ外交で顧客のニーズを把握し、サプライヤーやパートナーとともに“軽く早く”開発することで、BBUにとどまらない形に業態を変えることができた」と説明する。

環境変化に応じてESS事業は業態を変化させている
環境変化に応じてESS事業は業態を変化させている[クリックで拡大] 出所:パナソニック エナジー

 足元では、AIデータセンターにおけるAIデータ処理能力への要求はとどまるところを知らず、NVIDIAも新たなGPUアーキテクチャである「Blackwell」を投入しており、現在米国や日本でも導入が進んでいるところだ。BlackwellのGPU消費電力は1200W以上になっており、バックアップ電源には電力負荷変動によるシャットダウン回避が求められるようになっている。「もはや電源シェルフレベルにとどまらず、PDU(電源分配ユニット)やPSU(電源装置)も手掛けなければ、これらの要求に対応できない。パートナーとの連携で電源供給のためのサイドラック構築も視野に入れる必要がある。また、シャットダウン回避のための電力負荷変動吸収では、より急峻(きゅうしゅん)な電力の出し入れが可能なキャパシターを搭載するCBU(Capacitor Bank Unit)の開発も検討しなければならない」(加藤氏)。

パートナー連携によるスピードの追求
パートナー連携によるスピードの追求[クリックで拡大] 出所:パナソニック エナジー

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