長い通路を抜けると、そこはFCNTの地下実験室だった:イノベーションのレシピ(1/5 ページ)
FCNTは、新型スマートフォン「arrows Alpha」の販売開始に合わせ、報道陣向けに「中央林間 地下実験室ツアー」を開催。ジャパンクオリティーを支えるさまざまな評価試験の現場を初公開した。
案内されたのは、ある建物の地下――。長い通路を歩いた先にあったのは、FCNTの地下実験室だった。
富士通の携帯電話端末部門を前身とするFCNTは、2023年5月に民事再生法の適用を申請した後、レノボグループの支援を受けて事業を再開。レノボ傘下の新生FCNTとして、スマートフォンの「arrowsシリーズ」、シニア層向けの「らくらくスマートフォンシリーズ」などの主力製品の開発に取り組んでいる。
2025年8月28日には、arrowsシリーズの最上位モデルとして、ハイエンドながら8万円台と比較的手の届きやすい新製品「arrows Alpha」を投入した。AI(人工知能)機能や長時間駆動、堅牢(けんろう)なボディー設計など、最上位モデルとして必要十分なポイントを押さえながらも、近年ハイエンド機種なら10万円超えが当たり前の時代において、8万円台という攻めた価格設定が魅力の製品だ。これは、長年培ってきたarrowsシリーズの開発力と、レノボグループの調達力の融合があってこそ実現したものといえるだろう。
そんなFCNTが、arrows Alphaの販売開始直前の2025年8月26日に開催したのが、「FCNT 中央林間 地下実験室ツアー」である。落下/防水/温湿度などの過酷な環境試験や、厳格な評価基準に基づく品質検証の現場など、同社が誇る“ジャパンクオリティー”を支える舞台裏をメディアに初公開した。本稿では、その模様を多数の画像と動画を交えてお届けする。
音響性能試験
最初に訪れたのは、音響性能試験を行う現場だ。
無線機のテスター、オーディオアナライザー、シミュレーター用のPC、そして無響室内に設置された音響性能を測定するためのダミーヘッド「HATS(Head and Torso Simulator)」を組み合わせて、音響の客観評価を行う様子を見学できた。
HATSには通話時と同様の角度でarrows Alphaが固定されており、HATSの疑似耳(マイク)でスマートフォンのスピーカーからの音を拾ったり、疑似口(スピーカー)から音を発してスマートフォンのマイクで拾ったりすることで、マイクやスピーカーの性能を評価している。
また、同じ装置構成でスマートフォンのスピーカーの音量を客観的に評価する試験も行われている。音量の大きさは騒音計で計測し、評価しているという。
少し移動した先には、通話音質試験を行うスペースがある。中には大小2つの音響試験室(防音室)が設けられており、室内にはスピーカーが設置されている。ここからさまざまな騒音や環境音を流すことで、実際の使用環境に近い多様な条件を再現し、クリアな通話が可能かどうかを評価する。
例えば、新幹線の走行音、アミューズメントパークでの喧騒、幹線道路沿いの騒音など、さまざまな音のサンプルを用いて評価が行われているという。防音室が2つあるため、騒音あり/なしでの評価に加え、騒音あり同士での評価も実施しているとのことだ。
ツアーでは2人1組となり、防音室の内(こちらではスピーカーから大音量の騒音が流れている)と外に分かれてarrows Alpha同士で通話し、クリアな通話音質が実現されていることを確認できた。
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