富岳NEXTの開発は「Made with Japan」、NVIDIAが加わりアプリ性能100倍の達成へ:人工知能ニュース(1/2 ページ)
スーパーコンピュータ「富岳」の次世代となる新たなフラグシップシステム「富岳NEXT」の開発体制が発表された。理研を開発主体に、全体システムと計算ノード、CPUの基本設計を富士通が担当する一方で、GPU基盤の設計を米国のNVIDIAが主導するなど「Made with Japan」の国際連携で開発を推進する。
理化学研究所(以下、理研)と富士通、NVIDIAは2025年8月22日、東京都内とオンラインで会見を開き、スーパーコンピュータ「富岳」の次世代となる新たなフラグシップシステム「富岳NEXT」(開発コードネーム)の開発体制を発表した。理研を開発主体とし、全体システムと計算ノード、CPUの基本設計は富士通が担当する一方で、日本政府が出資するスパコンのフラグシップシステムの加速部(アクセラレータ)として初採用となるGPU基盤の設計を米国のNVIDIAが主導するなど国際連携で開発を推進する。富岳NEXTは、現行の富岳と比べて最大100倍程度のアプリケーションの高度化および高速化を目指して2030年ごろの稼働を目指す。

会見の登壇者。左から、富士通 執行役員副社長 CTO、システムプラットフォーム担当のヴィヴェック・マハジャン氏、文部科学省 研究振興局 局長の淵上孝氏、理化学研究所 理事長の五神真氏、NVIDIA ハイパースケールおよびハイパーフォーマンスコンピューティング担当副社長のイアン・バック氏[クリックで拡大]
文部科学省 研究振興局 局長の淵上孝氏は「これまでも『京』や『富岳』はわが国の科学技術力の発展や産業競争力の強化に役立ってきた。昨今の技術革新に伴う計算資源需要の急増や多様化への対応は急務であり、極めて高いAI(人工知能)/シミュレーション性能を実現する富岳NEXTの開発について各所から多くの期待の声をいただいている。理研と富士通、そして世界のAI産業をけん引するNVIDIAが加わることによってもたらされる効果は、科学技術の発展のみならずグローバル市場への訴求といった経済社会的な面からも計り知れない」と語る。
なお、富岳NEXTに関連する政府予算は基本設計を行う2025年度で約73億円となっている。詳細設計に入る2026年度以降も適宜予算措置を進め、2030年を予定する稼働までに京や富岳と同様に総額で1100億円程度の投資が行われるとみられる。
理研 理事長の五神真氏は「AI、先端半導体、量子情報技術といった革新的な技術の登場により計算科学は歴史的パラダイムシフトと呼ぶべき変革を迎えている。われわれはこの変革を的確に捉え、人類の計算可能な領域を飛躍的に拡大し、人類共通の課題を乗り越えていかなければならない。富岳NEXTは、この時代が求める人類共有の計算基盤であり、その実現は極めて大きな意義があると確信している。継承と革新の両立を理念に掲げ、AI、先端半導体、量子情報技術が到来するこの時代にふさわしい計算機として、これらを結び付ける中核的役割を担うことを約束する。現在の富岳の100倍という圧倒的な計算能力を実現し、計算科学の新たなパラダイムを世界に先駆けて切り開いていきたい。また、わが国の先端半導体戦略のさまざまな事業とも緊密に連携して進めていく。先端半導体技術を先取りして社会に実装する絶好の機会になるだろう」と述べる。
そして五神氏が最後に強調したのが、富岳NEXTのプロジェクトが「Made in Japan(メイドインジャパン)」ではなく「Made with Japan(メイドウィズジャパン)」であり、開発体制が国際連携に基づいている点である。「日本が培った技術を基盤力としつつも志を同じくする世界のパートナーと連携し、ともに未来を形作っていく。その協働こそがこれからの時代に不可欠であると確信している」(同氏)。
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