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NTTが光通信の「X帯」を新規開拓、既存光ファイバーで10倍の大容量化が可能に組み込み開発ニュース(1/2 ページ)

NTTは、従来の光通信波長帯を超えた新たな超長波長帯となる「X帯」を開拓することで、WDM信号の波長帯域を現行の光伝送システムの6.7倍となる27THzまで広帯域化するとともに、東名阪区間の距離に相当する1040km伝送後の伝送容量で従来比10倍となる160Tbpsの長距離大容量光伝送の実証に成功した。

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 NTTは2025年8月12日、従来の光通信波長帯を超えた新たな超長波長帯となる「X帯」を開拓することで、WDM(波長分割多重)信号の波長帯域を現行の光伝送システムの6.7倍となる27THzまで広帯域化するとともに、東京−名古屋−大阪(東名阪)区間の距離に相当する1040km伝送後の伝送容量で従来比10倍となる160Tbpsの長距離大容量光伝送の実証に成功したと発表した。敷設済みの既存の石英ガラス光ファイバーを用いた伝送路に適用可能な技術であり、大規模なインフラ変更を行うことなく大幅な大容量化を実現できる。同社が2030年代の実用化を想定するIOWN/6GにおけるAPN(オールフォトニクスネットワーク)の進化に役立てていく考えだ。

 現行の光伝送システムで用いられているデジタル信号処理とコヒーレント受信を組み合わせたデジタルコヒーレントWDM伝送方式は、EDFA(エルビウム添加光ファイバー増幅器)の増幅帯域であるC帯(波長1530〜1565nm)とL帯(同1565〜1625nm)を用いた約4THzの波長帯域が利用されている。光伝送システムとしての最大伝送容量は16Tbpsである。

 同じデジタルコヒーレントWDM伝送方式を用いて大容量化するには、現行の光伝送システムでも利用可能な光信号を多重する波長帯の新規開拓が必要になる。NTTは、PPLN(周期分極反転ニオブ酸リチウム)導波路を用いたOPA(光パラメトリック増幅器)による広帯域光増幅中継伝送技術の研究開発を進めており、2024年9月にはL帯の長波長側に隣接するU帯(1625〜1675nm)まで波長帯域を拡張し、従来のC帯、L帯と組み合わせた14.85THzの波長帯域を用いて、800kmの伝送距離で115.3Tbpsの大容量長距離伝送を実証している。

NTTが2024年9月に発表した研究成果と今回の研究成果の比較
NTTが2024年9月に発表した研究成果と今回の研究成果の比較[クリックで拡大] 出所:NTT

超広帯域光増幅中継器を新開発

 今回の研究における大きな成果は2つある。1つは、PPLN導波路による波長帯一括変換技術を適用した超広帯域光増幅中継器を新たに開発し、WDM信号を多重可能な波長帯域を従来の光通信波長帯を超えた超長波長帯へ拡張することに成功したことだ。新たに開拓したU帯の長波長側に隣接する1675〜1702nmの超長波長帯はX帯と定義した。その上で、C帯の短波長側に隣接するS帯(1460〜1530nm)にも対応を広げ、S帯、C帯、L帯、U帯、X帯にわたる、現行の光伝送システムの6.7倍となる27THz帯域の超広帯域光増幅中継器を実現した。

 これまでのU帯に対応する研究成果では、C帯やL帯といった従来帯域との間で相互に波長多重信号を一括変換することで、従来帯域用の光増幅器であるEDFAを新規波長帯の光増幅に利用していた。今回の研究では、L帯とU帯の間の相互変換用に試作したPPLN導波路の制御状態を変更して変換帯域をX帯まで広帯域化することで、U+X帯とC+L帯のWDM信号を相互に一括変換する波長帯変換器を構築した。S帯とC+L帯の間を変換する波長帯変換器も新たに試作し、これらと既存の光増幅器であるEDFAを組み合わせることで、S帯からX帯をカバーする27THz帯域の波長多重信号の一括増幅が可能な光増幅中継器の開発につなげた。

S帯からX帯をカバーする超広帯域光増幅中継器の開発
S帯からX帯をカバーする超広帯域光増幅中継器の開発[クリックで拡大] 出所:NTT

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