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廃プリント基板の資源循環スキームで、パナソニックと三菱マテリアルが組む理由素材/化学インタビュー(1/4 ページ)

パナソニックETソリューションズ 企画担当 CEエキスパートの田島章男氏と三菱マテリアル 金属事業カンパニー 資源循環事業部 事業開発部 企画室 室長の古賀沙織氏に、金属資源循環スキーム「PMPループ」の構築背景や概要と特徴、効果、採用事例、今後の展開について聞いた。【訂正あり】

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 近年、国内外において経済安全保障や環境保護についての観点から金属資源の有効活用がより一層求められている。経済産業省は持続可能な経済成長を実現するために「成長志向型の資源自律経済戦略」を2023年に策定し、資源の効率的な利用とリサイクル促進により、経済発展と環境保護を両立させることを目指す。

【訂正】初出時、タイトルの社名および本文内の役職、キャプションに誤りがありました。お詫びして訂正致します。(編集部/2025年8月8日午前9時55分)

 また、環境省が2024年に策定した「第五次循環型社会形成推進基本計画」では持続可能な循環型社会の構築を目指し、資源の循環利用や環境負荷の低減、地域社会との連携、教育/啓発活動を通じて廃棄物の削減やリサイクルを促進し、資源の有効活用による環境保全を目的としている。この計画で、2030年度までに金属リサイクル原料の処理量を倍増させる方針だ。

 こういった状況を踏まえて、パナソニック くらしアプライアンス社、パナソニック ETソリューションズ、三菱マテリアルは、廃家電から発生する廃プリント基板から回収した金、銀、銅をリサイクルし、再資源化した素材をパナソニックグループが活用する「PMP(Product−Material−Product)ループ」を共同で構築し、運用している。パナソニックと三菱マテリアルの調べによれば、PMPループのように定常的な資源循環を実現したスキームは業界初だという。同スキームを通じて資源循環で活用された都市鉱山資源は2024年12月時点で、累計で金が1.1トン(t)、銀が33t、銅が8100tになった。

 パナソニックETソリューションズ 企画担当 CEエキスパートの田島章男氏と三菱マテリアル 金属事業カンパニー 資源循環事業部 事業開発部 企画室 室長の古賀沙織氏に、PMPループの構築背景や概要と特徴、効果、採用事例、今後の展開について聞いた。

国内外でサーキュラーエコノミーと資源循環のニーズが高まっている

MONOist パナソニックグループがPMPループを構築した背景を教えてください。

パナソニックETソリューションズ 企画担当 CEエキスパートの田島章男氏
パナソニックETソリューションズ 企画担当 CEエキスパートの田島章男氏 出所:パナソニック ETソリューションズ

田島章男氏(以下、田島氏) 国内では2001年に家電リサイクル法が施行され、テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機といった4家電を対象に、関係者がそれぞれ応分の役割を担い、適正処理と資源化を行う仕組みが始まった。メーカーには、適正な引き取りと再商品化(リサイクル処理によって有用な資源を回収)義務が課された。

 そして、パナソニックグループは東芝との共同出資で管理会社のエコロジーネットを設立し、全国に引き取り場所と再商品化工場を設け、リサイクルを開始した。

パナソニックグループの家電リサイクルスキーム
パナソニックグループの家電リサイクルスキーム[クリックで拡大] 出所:パナソニックETソリューションズ

田島氏 パナソニックグループは、家電リサイクル法施行当初から「循環型モノづくり」を模索しており、リサイクル工場で回収した資源(樹脂、金属、ガラスなど)をグループ内の工場に循環させ「商品から商品へ」を目指してきた。洗濯機と冷蔵庫を手解体した樹脂を商品に再利用する循環を2003年に開始した。現在までに、樹脂の循環スキームを進化させながら、基板や鉄の循環スキームを構築し、他の素材の循環スキームも構築を進めている。

パナソニックグループの循環型モノづくりの取り組み
パナソニックグループの循環型モノづくりの取り組み[クリックで拡大] 出所:パナソニックETソリューションズ

田島氏 また、パナソニックグループでは現在、長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT(パナソニック グリーン インパクト)」を掲げ、「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立を目指している。同ビジョンでは、地球環境問題の解決を最重要課題と位置付け、事業活動や提供する商品/サービスを通じて、社会全体のCO2排出量削減に貢献することを目標としている。2050年に向けて、世界におけるCO2総排出量の「約1%(3億トン)」の削減インパクトを目指している他、循環型モノづくりの進化とサーキュラーエコノミー型事業の創出により資源の有効活用と顧客価値の最大化に取り組んでいる。

「Panasonic GREEN IMPACT」の目標
「Panasonic GREEN IMPACT」の目標[クリックで拡大] 出所:パナソニックETソリューションズ

田島氏 特にサーキュラーエコノミーや資源循環については、海外で積極的な取り組みが目立つ。例えば、欧州では自動車分野で再生材の使用義務化が進んでおり、家電分野でも同様の動きが起きると予測されている。米国でもAppleが再生材/再生可能材料を利用した製品製造を目指しており、製品の9割を占める15品目(アルミ、銅、コバルト、金、リチウム、鉄、スズ、樹脂など)の再生利用を推進している。


国内外におけるサーキュラーエコノミーと資源循環のニーズの高まり,国内外におけるサーキュラーエコノミーと資源循環のニーズの高まり[クリックで拡大] 出所:パナソニックETソリューションズ

田島氏 そこで、パナソニック くらしアプライアンス社やパナソニックETソリューションズは持続可能な社会の実現に向けて、廃プリント基板の資源循環スキーム構築に着目した。家電の廃プリント基板は、金、銀、銅といった重要金属が回収できるが、原料として品位が低く、リサイクル処理の工夫で価値を高める必要があった。このような特徴から循環型モノづくりの材料として適していると判断し、三菱マテリアルと共同でPMPループの構築に踏み切った。

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