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モノづくりソフトウェアでデジタル赤字を反転へ、「New SDV」が勝ち筋に車載ソフトウェア(2/3 ページ)

イーソルのユーザーイベント「eSOL Technology Forum 2025」の基調講演に同社 代表取締役社長CEO兼CTOの権藤正樹氏が登壇。本稿では、同講演で権藤氏が語った、日本のモノづくりを担う製造業と関わりの深い組み込みソフトウェアが果たすべき役割や、SDVへの取り組みが進む自動車市場における日本の勝ち筋などについて紹介する。

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デジタル赤字を削減するにはどうすればいいのか

 このようにモノづくりのソフトウェアを含めて厳しいデジタル赤字が予測されているわけだが、日本企業に光明はないのだろうか。デジタル経済レポートでは、デジタル赤字を削減するために短期的には受け取りを増やすことを挙げており、その手段には「高利益/高成長率のソフトウェアプロダクトへの支援」と「先行プラットフォーム事業者がカバーしていない領域の奪取」がある。権藤氏は「モノづくりのソフトウェア関連では、SDVを含むSDXで中国が優勢ではあるもののまだ制覇されていないので領域奪取のチャンスがある」と補足する。

デジタル赤字の削減のため方向性
デジタル赤字の削減のため方向性。注釈は、権藤氏が重視するモノづくりソフトウェアの方向性である[クリックで拡大] 出所:イーソル

 またデジタル経済レポートは、デジタル赤字の削減に向けて長期的には「支払い構造を転換する」ことを提案しており、研究開発力で米中に匹敵する成果が出ている量子コンピューティング(QT)分野から生まれる新市場で受け取り増加の可能性があるとしている。「しかしQTだけでは生き残れない。SDXでポジションを取って組み合わせていく必要がある」(権藤氏)。

モノづくりソフトウェアが主戦場に
モノづくりソフトウェアが主戦場に[クリックで拡大] 出所:イーソル

 デジタル赤字を削減していくには受け取りを増やし支払いを削減しなければならない。そのために、高齢化と人口減少が進む日本にとって必要なのがソフトウェアの国際市場進出型への転換である。権藤氏は「エンタープライズ系、サーバサイドはもう厳しいが、モノづくりのソフトウェアはまだいける。今が最後のチャンスだ。日本の製造業が高度成長期にやってきたことをモノづくりのソフトウェアでやらなければならない」と強調する。

SDVにとどまらない日本発のSDXソフトウェア基盤「New SDV」

 ここまでのデジタル経済レポートを中心とする分析結果は経済観点に基づくものだ。そこで出ている結論は「ソフトウェアプラットフォームを制する者がSDXを制する」ということだ。今後の来るべきサイバーフィジカルシステム(CPS)を実現していくための技術的観点でも、ソフトウェアプラットフォームを重要とする点で変わらない。

 そこで権藤氏が提案するのが、自動車向けのSDVにとどまらない日本発のSDXソフトウェアプラットフォームとなる「New SDV」である。同氏は「Vehicleは英語では自動車に限らず動くもの全てを指す。日本国内にはロボット、AGV(無人搬送車)、ドローン、船舶、インフラ制御などあらゆるVehicleの産業がある。これらを包含するNew SDVに対応するプラットフォームを生み出すことで自動車の4兆円を含む約12兆円の隠れデジタル赤字をひっくり返すことが日本のモノづくり産業の生き残る道ではないか」と述べる。

日本発のSDXソフトウェアプラットフォームとなる「New SDV」
日本発のSDXソフトウェアプラットフォームとなる「New SDV」[クリックで拡大] 出所:イーソル

 New SDVのプラットフォームのデザインでは、マイクロサービスを中心としたSOA(サービス志向型アーキテクチャ)にソフトウェアアーキテクチャを移行する必要がある。またAPIについては、イーソルが既存のSDV向けプラットフォームに向けて選定したDVE(Driver/Vehicle/Environment)モデルが、New SDV向けのAPIモデルになるとした。

DVEモデルが「New SDV」向けのAPIモデルとなる
DVEモデルが「New SDV」向けのAPIモデルとなる[クリックで拡大] 出所:イーソル

 このNew SDVのプラットフォームでは意味を持ったデータ収集が可能になり、データの粒度もハードウェア依存ではない機能レベルの粒度となり、データ量のコントロール性も高いという。「プラットフォームを持っているからこそ獲得できるデータだ。特に、DVEモデルに基づくAPIの切り方が重要になる」(権藤氏)という。

プラットフォームとAPI、データの関係
プラットフォームとAPI、データの関係[クリックで拡大] 出所:イーソル

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