SDVの潮流に自動車業界は対応できるのか、AWSは「3つの道具」で支援:車載ソフトウェア(4/4 ページ)
AWSジャパンが自動車業界で注目を集めるSDVの潮流や、SDVの浸透によって変わりつつあるツール環境や仮想ECU、コネクテッド基盤の動向について説明した。
コネクテッド基盤
AWSが早い段階から自動車業界の採用で実績を積み上げてきたのは、モビリティサービスの車両データ収集/管理などに用いられるコネクテッド基盤である。ホンダはコネクテッドサービス向けに2013年からAWSを採用しており、トヨタ自動車も2020年に「モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)」の強化に向けAWSとの提携拡大を発表している。同様のモビリティサービスの基盤としてBMWグループやヒョンデ(Hyundai Motor)にも採用されている。SUBARUは、2021年に社内データ統合基盤となるグローバルPLMをAWSに構築したことを発表しており、開発/生産からアフターセールスまで一貫したデータ管理を実現しているという。
2025年1月開催の「CES 2025」では、AWSがコネクテッド基盤の運用デモを披露している。梶本氏は「このデモでは、地図上のある場所で急ブレーキすることが増えるという事態に対して、ADASをアップデートしたタイミングと同期しているという分析結果を得た。そこで、急ブレーキ時にカメラデータを取得するように各車両に指示することで、車両周辺の自転車に反応しているという要因を導き出し、即座に開発対応することで改善できることを示した」と説明する。
また、AWS Summit Japan 2025では、ホンダがコネクテッド基盤の次期機能試作である「Honda Data Mesh」に関する展示を行った。この次期機能試作は、分散型/ネットワーク型のデータプラットフォームであるデータメッシュをコネクテッド基盤で実現するためのもので、Raspberry Piを搭載するミニチュア車両のセンサーデータを、データメッシュプラットフォームの「snowflake」と連携させる内容になっている。「Raspberry Pi車両のセンサーをデータ生成者としてデータメッシュに登録し、非構造化データを収集してそれらのデータに対するタグ付けなどを自動化した上でデータメッシュに取り込み、データ消費者として登録したsnowflake上の解析アプリケーションに配信するという仕組み。解析アプリケーションが加速度センサーのデータを積分して車両の移動経路を表示するとともに、車両の他センサー情報も表示できることを確認できており、コネクテッド基盤としてのデータメッシュの有効性を確認できた」(梶本氏)としている。
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