AIデータセンターは2029年にサーバ1台の電力が1MW超へ、システム構成はどうなる:組み込み開発ニュース(3/3 ページ)
インフィニオンテクノロジーズ ジャパンは、生成AIの登場により高性能化への要求が大幅に高まっているAIデータセンター向け電力供給システムの市場動向と同社の取り組みについて説明した。
2029年以降にAIサーバラック1台当たりの電力は1MW超へ
AIサーバラックへの電力供給は、2026年以降の250kW超から、2029年以降には1MW超まで増大することが想定されている。
インフィニオンテクノロジーズ ジャパン インダストリアル&インフラストラクチャーI2) 事業本部 マーケティング部 部長の藤森正然氏は「この1MW超の時代には、増大するCO2排出量削減への対応が必要になるため、外部電源とともにAIデータセンター内に設置している再生可能エネルギーの電力を直接利用できるようにグリッドを整備する必要が出てくる」と説明する。そこで求められるのが、直流電力を双方向にやりとりできるSST(半導体変圧器)と、直流電力を高速に遮断できるSSCB(半導体遮断器)である。
インフィニオンは、SSTや再生可能エネルギーの直流変換システムなど向けに、SiCデバイスを採用した2.3kV対応のパワーモジュールを開発済みだ。SSCBについても、電力分配に特化した設計を採用したJFET(接合型電界効果トランジスタ)のSiCデバイスを用意している。「SiCのパワー半導体としてはMOSFETが一般的だが、SSCB向けでは、オン抵抗が低い上に、突入電流に耐えるためのリニアモードの安定性と、スイッチを切る際に発生する過電圧に耐えるアバランシェ耐性が高いJFETが最適だ」(藤森氏)という。
なお、これらAIデータセンター向け電力供給システムで多く用いられているのはシリコンパワー半導体だが、250kW超の電力供給におけるIBC向けではGaNデバイス、1MW超のSSTやSSCBではSiCデバイスの適用が想定されている。後藤氏は「高速スイッチングであればGaN、高耐圧であればSiCなど、最適な技術の組み合わせでAIデータセンターの広範なニーズを満たせるハイブリッドアーキテクチャもインフィニオンの強みになるだろう」と述べている。
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