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技術者のChatGPT利用が本格化 24.9%が生成AIを使用、Google検索は減少傾向に間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(29)(4/4 ページ)

デジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第29回は、生成AI時代における技術者の情報収集行動の変化を取り上げ、これからのデジタルマーケティングの在り方について考える。

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7.ブランディングの重要性が増す いかにして想起される企業になるか

 課題に直面したとき、人は必ずしもすぐに検索を始めるとは限らない。多くの場合、まず頭に浮かぶのは「知っている企業」や「聞いたことのある製品」だ。

 このように、記憶の中から企業や製品を思い出す行動は、マーケティングにおいて「想起」と呼ばれる。

 今回のアンケート調査でも、「技術の専門用語」や「課題に関するキーワード」に加え、「製品名」や「企業名」といった指名検索が一定数見られた。この結果は、ジョブリサーチ(課題解決型の調査)においても、まずは記憶にある企業を調べるところから始まっていることを示している。

テクノポートが2025年4月に実施したアンケート調査の一部(検索エンジンで技術情報を調べる際に、よく使うキーワードの種類は?)
図4 テクノポートが2025年4月に実施したアンケート調査の一部(検索エンジンで技術情報を調べる際に、よく使うキーワードの種類は?)[クリックで拡大] 出所:テクノポート

 そして、一度でも想起された企業は、その後の比較/検討フェーズに入りやすくなる。たとえその時点で課題解決に至らなかったとしても、「最初に調べた企業」は記憶に残りやすく、再び話題に上がる可能性がある。つまり、想起されることによって“選ばれるチャンス”が生まれ、それが営業機会へとつながる。

 では、いかにして想起される存在となるか。重要なのは、「記憶に残ること」だ。そのためには、接触機会を増やす、あるいは印象に残るコンテンツを届けるといった工夫が欠かせない。

 これまでは、ナレッジリサーチの段階において自社サイトを訪問してもらえる機会があり、接点の母数を確保しやすい状況であった。しかし現在は、ChatGPTなどを活用することで基礎知識の取得が容易になり、ナレッジリサーチを通じた自然な流入は徐々に減少し始めている。その影響により、Webサイトへのアクセス数も今後は減少傾向に転じる可能性がある。

 今や「たくさん接触して覚えてもらう」から、「限られた接触の中で確実に記憶に残る」へ――接触の質が問われる時代となりつつあるのだ。

 Webコンテンツ、展示会、メディア掲載、資料設計など、あらゆるタッチポイントにおいて、「何を伝えるか」と同時に、「どのように印象づけるか」までを意識した情報設計が重要となる。

 想起されることによって検討テーブルに乗り、検討されることによって営業機会が生まれる。ブランディングとは、単なる認知の獲得ではなく、検索される前に“思い出される企業”となるための仕掛けそのものだ。

 生成AIの普及により、情報を調べるコストが大幅に低下した今、想起という“入り口での優位性”は、これまで以上に重みを増している。

今回のまとめ

 生成AIの登場により、技術者の情報収集のパターンは確実に変わり始めている。これまでのように、ナレッジリサーチを経由して自社サイトへの流入を促すことは困難になりつつあり、ナレッジ系SEOの価値も相対的に低下しつつある。アクセス数の拡大自体も、以前ほど単純なものではなくなってきている。

 その一方で、ジョブリサーチにおけるAI引用対策やブランディング、そして確度の高いリードを獲得するための戦略は、かつて以上に重要性を増している。

 AIが検索の前段に使われる時代では、「どのように見つけてもらい、どこで記憶に残るか」が、従来にも増してマーケティング成果を左右する要因となっている。

 とはいえ、ナレッジリサーチそのものの需要がなくなるわけではない。むしろ、生成AIの精度向上によって、自社の技術や強みを“適切な相手に、適切なタイミングで見つけてもらえる”可能性は高まりつつある。

 だからこそ、今求められるのは、AI時代に対応したデジタルマーケティングへのシフトだ。

 従来の手法を見直しながら、情報の出し方/見せ方/残し方を再設計していくことが、これからの競争力につながっていく。 (次回へ続く)

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筆者紹介

永井満(ながい みつる)
テクノポート株式会社 Webマーケティング事業部 名古屋オフィス責任者

日本大学大学院(航空宇宙工学専攻)を卒業後、新卒で入社したボッシュ株式会社にてディーゼルエンジンの設計職を経験した後、テクノポート株式会社へ入社。現在はWebマーケティングコンサルタントとして、中小企業から大手製造業まで幅広い企業のクライアントを担当。技術の魅力を伝えることにこだわったマーケティング支援を心掛けている。


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