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技術者のChatGPT利用が本格化 24.9%が生成AIを使用、Google検索は減少傾向に間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(29)(3/4 ページ)

デジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第29回は、生成AI時代における技術者の情報収集行動の変化を取り上げ、これからのデジタルマーケティングの在り方について考える。

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5.オープン化の重要性 引用される企業になるために

 生成AIの普及により、「検索される」から「推薦される」への情報行動の変化が始まっている。ただし、ジョブリサーチにおいてAIがどのような情報を根拠に企業名を出力しているのかについては、いまだ明確なロジックは見えていない。

 現状では、「〇〇メーカーおすすめ〇選」や「〇〇技術の有名企業一覧」といったキュレーション系の記事が、学習ソースとして機能しているともいわれている。また、依然として検索エンジンを経由するケースもあることから、「SEOの重要性は変わらない」との見方も根強い。

 ただし、それらはあくまで“現時点での傾向”にすぎず、今後も通用する保証はない。生成AIは進化を続けており、情報収集の経路も変化していく。そのような中で、唯一確実といえるのは、「クローズされた情報はAIには見えない」という事実である。

 故に、まず取り組むべきは情報のオープン化である。

 例えば、これまで「資料ダウンロード」で囲い込んでいた技術仕様書や解説資料を、一部でもオープンな形で公開しておくことで、生成AIに引用される可能性は大きく高まる。

 AIがどのようなキーワードで企業を探し、どのような文脈で紹介するかは制御できない。であるならば、あらゆる入り口に備えて“露出可能な情報”を広く持っておくことが、生成AI時代における情報戦略の基盤となる。

 この「オープン化」は、単に資料を配布するという話ではない。企業として“何を行っており、誰の課題にどのように応えられるのか”を、あらかじめWeb上に提示しておくという行為そのものであり、それはAIに向けた発信であると同時に、同様の課題を抱える検索者に対する誠実なシグナルにもなる。

 「情報の価値は囲ってこそ」という常識が崩れつつある現在、オープン化は単なる方針ではなく、生成AIに“見つけられる”ための前提条件となりつつある。

6.オープン化時代でもリードの接点として機能する資料ダウンロード

 生成AIの登場、展示会の回帰、そして技術者による調査行動の多様化――これらの変化が進む中で、Web経由で大量のリードを獲得できる時代は、少しずつ終わりに近づきつつある。

 ChatGPTなどで事前に概略を把握し、ある程度の情報整理を済ませた上でWebを訪れるといった行動が増加しており、「取りあえず問い合わせてみる」という流れは明らかに減少傾向にある。

 こうした変化の中で注目されるのが、「オープン化」と「クローズ化(資料ダウンロード)」という、両立すべき情報設計の在り方である。

 まず、AIに自社を見つけてもらうためには、そもそも情報がWeb上に公開されている必要がある。AIがどのようなキーワードで企業情報を抽出しているのかはブラックボックスであり、それをコントロールすることはできない。だからこそ、「AIが拾える状態にしておく」ことが、引用されるための最低条件となる。

 例えば、これまでリード獲得の導線としてクローズしていた技術資料や事例紹介などの一部をオープンに切り出すことで、AIに認知される可能性は高まる。つまり、囲い込みから始まる施策であっても、オープンな露出を組み合わせることにより、生成AI時代に適した情報の“見せ方”へと進化していく。

 とはいえ、リード情報の獲得が不要になるわけではない。むしろ重要なのは、「とにかく数を集める」ことではなく、「検討フェーズにいる相手を確実に引き込む」ことである。

 今回のアンケート調査においても、「ダウンロードしたい」と思う資料の上位には、「技術仕様書」「製品カタログ」「技術解説資料」が挙げられた。B2Bにおける商談は、このような実質的な情報を基盤として進められる。つまり、“検討を進める判断材料”としての資料提供は、今も重要な意味を持っている。

 そこで求められるのが、「どこまでをオープンにし、どこからをクローズにするか」という情報設計上の線引きだ。

  • AIや調査者に拾われやすいよう、技術概要、対応範囲、用途展開などの情報はオープン化する
  • 検討を深めるきっかけとして、スペック詳細、導入事例、プロセス情報は資料ダウンロードに設ける

 このように、“引用される”ためのオープン化と、“商談に進ませる”ためのクローズ化を切り分ける視点が、生成AI時代の情報設計において重要性を増している。

テクノポートが2025年4月に実施したアンケート調査の一部(企業のWebサイトでダウンロードしたいと思う資料の種類は?)
図3 テクノポートが2025年4月に実施したアンケート調査の一部(企業のWebサイトでダウンロードしたいと思う資料の種類は?)[クリックで拡大] 出所:テクノポート

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