自動車部品で採用を目指す高強度セルロースファイバー材料 その利点とは?:素材/化学インタビュー(2/3 ページ)
パナソニックHD MI本部 生産技術研究所 材料プロセス技術開発部 有機材料技術課 課長の豊田慶氏に、kinariの特徴やリサイクルシステム、展開事例、最近の取り組み、今後の展開について聞いた。
kinariの展開事例とは?
MONOist セルロースファイバーやkinariの展開事例についても教えてください。
豊田氏 2018年にパナソニックのコードレススティック掃除機「MJ-SBU820」と「MJ-SBU620」の筐体材料としてセルロースファイバーを採用した。これが家電で初採用の事例となる。セルロースファイバーは軽く硬さがある素材だが、MJ-SBU820とMJ-SBU620での採用に当たっては、堅牢性を向上するハニカム構造を導入することでより強度を高めた。両製品は既に販売されていないが家電機器での採用という大きな一歩だった。
豊田氏 2019年7月にはパナソニックとアサヒビールと共同で、セルロースファイバーを55%以上含有したkinariを用いて環境配慮型リユースカップ「森のタンブラー」を開発し、屋外でのイベントや店頭での持ち帰り用ビール類の提供を想定し展開をスタートした。森のタンブラーは、高い形状自由度とリユース可能な強度を実現するとともに、画像や文字を自由にデザインすることができるため、さまざまなイベントでノベルティや記念品としても使われている。
2021年11月にはパナソニックがアサヒビールとともに、パンダが食べずに廃棄していた竹から抽出したセルロースファイバーを原料としたkinariを用いた環境配慮型リユースカップ「パンダバンブータンブラー」を開発し、同年12月2日にアドベンチャーワールド(和歌山県白浜町)内のショップと公式オンラインショップで発売した。
2023年8月にはパナソニックと福知山市と共同でkinariを用いて「人と環境に優しい小中学校の給食食器」を開発し、同年9月4日に市内の23校で計6700人分の給食食器(トレイ、カップ、ボウルなど5種類)として利用がスタートした。福知山市は林業が盛んで、間伐材も多く発生する。この取り組みではこの間伐材から抽出したセルロースファイバーを原料にkinariを製造し、給食用の食器を生産した。
MONOist kinariの最近の取り組みについても教えてください。
豊田氏 最近の取り組みでは、kinariとして「海洋生分解性のセルロースファイバー成形材料」と「高強度のセルロースファイバー成形材料」を開発した。
海洋生分解性のセルロースファイバー成形材料では、kinariの混練技術と成形技術を改良し、セルロースファイバーのつなぎ部分を海洋分解性の樹脂に置き換えることで、海洋での完全生分解性を有し、耐久性用途に使用されるポリプロピレンと同等の強度を備えた、バイオマス度100%のセルロースファイバー成形材料を開発した。この材料は主成分が天然由来成分で樹脂使用量を削減できる他、日本バイオプラスチック協会が認証する「海洋生分解性バイオマスプラ」マークも取得している。
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