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リアルタイムOSを取り巻く環境はこの5年で激変、今後も重要性は増していくリアルタイムOS列伝(60)(3/3 ページ)

IoT(モノのインターネット)市場が拡大する中で、エッジ側の機器制御で重要な役割を果たすことが期待されているリアルタイムOS(RTOS)について解説する本連載。最終回となる第60回は、連載を展開してきた5年間のRTOSの動向をまとめる。

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連載では取り上げなかったWindows系とLinux系の動向

 連載の中で一切取り上げなかったのがWindows系である。「Windows CE」からスタートし、「Windows Embedded」と改称後に「Windows IoT」に置き換えられて現在も提供が続いてはいる。しかし、もうRTOSというよりも広義の組み込みOSというべきもので、RTOSと呼ぶにはちょっと厳しい気もする。Windows CEの時代はx86以外のアーキテクチャを広範にサポートしていたが、現在はx86とArm64だけだし、そもそもこれまでWindows系を使っていた組み込み向けシステム(デジタルサイネージ、POS、キオスク端末、ATMなど)がどんどん非Windows系組み込みOS(AndroidないしLinux)に置き換えられている現状では、次第に先細りになって行く感が否めない。

 組み込み向けシステムという意味で言えば、最悪保証時間を担保するLinuxカーネル用パッチである「PREEMPT_RT」が2024年9月にLinuxカーネルに正式に統合されたことにも言及しておきたい。性能として十分か? といわれると「用途による」としか言いようがないが、それでもLinuxが標準でリアルタイム性を持ったことで、一部の用途ではRTOSと併用するような必要がなくなった、ということも特筆すべきことだろう。

RTOSは今後も機能を充実させ広く普及していく

 この連載を行っていた5年間で、RTOSを取り巻く環境は随分変わってきた。連載第1回で過去10年の動向をご紹介したが、それからの5年間で過去10年よりももっと大きな変化が起きた気がしなくもない。

 理由の一つは、コロナ禍における半導体供給不足により、特定アーキテクチャにベアメタルでシステムを組むという従来のやり方だと製品を市場投入できなくなるので、もう多少効率が悪くてもRTOSを挟んでハードウェアをある程度抽象化することで、アーキテクチャ非依存化を進めるというトレンドが加速したことだろう。あと、機能安全やセキュリティ、さらにはOTA(Over the Air)によるファームウェアアップデートなどが必須項目となりつつあり、こうした機能を利用できるRTOSが求められるようになったから、というあたりだろうか。

 今後も、RTOSはますます機能を充実させながら広く普及していくだろうというのがこの5年間の連載を終えての筆者の偽らざる感想である。そこで、現在有力なFreeRTOSとZephyrの2大勢力を打ち破る新たな候補が出て来るのか(一番可能性が高いのはPX5だろうか?)は現時点では分からない。(連載完)

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