より幅広い溶接施工に対応、パナソニックがフルデジタル溶接機の最上位モデル:FAニュース
パナソニック コネクトは、新世代のフルデジタル溶接機「N」シリーズの最上位モデルとなる交直両用TIG溶接機「YC-350NA1」を発売した。高精度波形制御技術を強化し、初めての操作でも使いやすいようにサポート機能を追加した。
パナソニック コネクトは2025年6月13日、新世代のフルデジタル溶接機「N」シリーズの最上位モデルとなる交直両用TIG溶接機「YC-350NA1」を発売した。従来機の技術を継承、発展させながら、高精度波形制御技術を強化。初めての操作でも分かりやすく使いやすいように「溶接ナビ」「溶接コンシェルジュ」などの機能を追加した。
Nシリーズの開発コンセプトは、Comfortable(使いやすく)、Capable(溶接性能の向上)、Connectable(つながる)の3つ。ユニバーサルデザインを採用して操作を簡単にして、溶接適用範囲を拡大して溶接安定性を向上、ネットワーク対応によって溶接機の現場情報を見える化する。
YC-350NA1は、前面操作パネルにタッチパネル式カラー液晶モニターを採用している。溶接機の操作や条件設定の操作性、視認性の改善を図り、情報を分かりやすく表示して直感的な操作を可能にした。
経験の浅い作業者向けに、サポート機能も追加。溶接ナビを使えば、溶接作業の推奨条件を自動で選択してくれる。溶接継手などの情報がイラストで表示されるため、実際の作業を想像しながら設定できる。液晶表示に従って現場の作業状況や作業者の課題を入力すると、溶接パラメーターの調整が完了する溶接コンシェルジュの機能も備えている。オプションのデジタルリモコンにより、手元での操作も可能だ。
溶接性能については、直流TIG溶接でパルス周波数は最大3000Hz。交流TIG溶接では最大600Hzで設定できる。出力を350A、60%使用率とすることで、溶接適用範囲を拡大した。交流、直流TIG溶接でアークを集中させて溶接の安定性を向上しつつ、板厚が大きく異なる組み合わせでも溶落ちを抑えられる設計になっている。
交流TIG溶接では、作業時のアーク音をできるだけ抑えながら溶接環境と作業性を改善する波形や設定を追加。直流TIG溶接では、2A設定や精細モードによる薄板溶接をより細かく設定できる。精密スポット溶接では、溶接の短時間設定によって、銅線などを従来よりも簡単に溶接できる。
アークスタートには、従来の「高周波スタート」に加え、新たに「ワンパルススタート」を搭載した。アークスタート時の母材状況による高周波の連続発生を防ぎ、高周波発生の無駄を減らしてノイズの発生時間を短くした。
YC-350NA1は今後、溶接施工の前後工程も含めた溶接関連情報のプラットフォーム「統合溶接管理システム iWNB for Welding Machines」に対応する予定。同システムとの接続によって、溶接機の情報を収集、蓄積、分析できるようになる。
同社はさらに、溶加棒の添加作業を自動化する送給装置「YE-10NJ1」も発売した。高度な技量が求められるTIG溶接の難易度を自動化によって低減し、溶接作業の安定性向上を図る考えだ。
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