EV専用工場は作らないがEV比率100%も可能、マツダの電動車生産:モノづくり最前線レポート(2/3 ページ)
EVの専用工場をつくらないと宣言したマツダ。さまざまなパワートレインの車両を混流生産すれば、EV専用工場の新設に比べて設備投資を大幅に抑制できる、というのがその理由だ。ラージ商品群や電動化に合わせて導入した最新の混流生産はAGVがカギを握る。
ベルトコンベヤーでは実現できない柔軟さ
ラージ商品群はパワートレインのバリエーションが豊富だ。8速ATとガソリンエンジン、8速ATとディーゼルエンジン、マイルドハイブリッドシステムとディーゼルエンジン、そしてPHEVの中から消費者は選ぶことができる。そこにさらにEVが加われば、混流生産での作り分けは複雑になる。マツダは防府第2工場のメインライン/サブラインにベルトコンベヤーではなくAGVで流れる区間を設けることで、複雑さを吸収する。
例えばPHEVの駆動用バッテリーを組み立てるサブラインはAGV上で組み立て作業を行う。組み立てられたPHEVの駆動用バッテリーは、メインラインを流れてくるボディーに合わせてAGVで移動する。AGVのリフトアップ機能によってボディーを運んでくるボディーハンガーまで持ち上げ、オペレーターの位置決め作業によって搭載される。
AGVは床に貼られた軌道テープの上を走る。軌道を貼り替えれば容易に工程レイアウトが変更でき、AGVの台数を増やせば生産能力を増強できる。駆動用バッテリーを組み立てる際は、画像処理技術によるモニタリングでオペレーターは所定の締め付けの順序を守り、センサー内蔵の締め付けツールによってトルク保証を行うなど、工程内で品質を保証できるようにした。コネクターの締結や真空状態のチェックなども工程内で行う。
他のパワートレインのサブラインでもAGVを活用している。車両1台につき2台のAGVにエンジンや足回り部品を搭載していくが、車両は「計画順序生産」に基づき5日前に最終決定した順序で流れてくる。その順序通りにパワートレイン部品を搭載する上で、ホイールベースやガソリンエンジン/ディーゼルエンジンの差、駆動方式(FF/FR/4WD)の違いにAGVで対応する。
ベルトコンベヤーではオペレーターが作業できる方向が限定されていたが、AGVであればオペレーターがパワートレインの周囲で回り込んで作業できるため、作業性が向上されたという。車両1台分のパワートレイン部品を搭載した2台1組のAGVは互いの距離を制御するため、ホイールベースの異なる車両にも対応できる。パワートレインが多様化するマルチソリューションの中でも、AGVによってサブラインが複雑化しないようにする。
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