北海道から大阪へ、鉄道から自動運転トラックにコンテナを載せ替えて輸送:物流のスマート化(2/2 ページ)
日本通運とJR貨物、T2の3社は自動運転トラックと貨物鉄道を組み合わせたモーダルコンビネーションの実証を開始した。第一弾として、雪印メグミルクの常温品を北海道から関西まで輸送する。
鉄道用の31フィートタイプのコンテナは通常トラックにそのままでは載せられないが、新開発のコンテナは貨物列車からトラックに直接載せ替えられることが特徴だ。モーダルコンビネーションの課題になりやすい接続性や効率性を改善する。
T2とJR貨物は、日本通運や全国通運、日本フレートライナーとともに、全国に自動運転輸送ネットワーク網を拡大することを目指して2024年11月から実証実験を検討してきた。
自動運転トラックによる「運送事業」へ
使用する車両はT2が開発したレベル2の自動運転トラックだ。T2は2025年7月からレベル2の自動運転トラックを用いた運送事業を東京/神戸間で開始する。当初は5台でスタートするが、2026年度末には25台まで増やす。2027年度は許認可次第だが早ければ10月にもレベル4の自動運転トラックによる運送事業に移行する計画だ。
2025年7月から、レベル4の自動運転トラックによる運送事業がスタートするまでの2年間は、「自動運転トラックによる運送事業」としてプロセスを洗練させる他、社会受容性の向上にも取り組む。輸送エリアやトラックの台数を徐々に拡大し、2032年度には2000台規模での運送事業を目指す。
レベル2の自動運転トラックは、運転席のスタッフがいつでも運転できる体勢でなければならない。T2のトラックでは、ステアリングに手を添えておくための肘掛けの他、自動運転区間やブレーキ量など走行に必要な情報を表示するHMI(ヒューマンマシンインタフェース)を搭載し、スタッフの疲労軽減を図る。また、レベル2の自動運転トラックによる運送事業の開始後、3カ月〜半年程度は運行管理者からのコミュニケーションを手厚くして運転席のスタッフをサポートする。
「2000台は貨物鉄道の輸送規模に比べれば大きくないが、1社で台数を増やすには限界がある。自動運転トラックに必要な遠隔監視や整備拠点など機能を提供することで、自動運転トラックの台数の増加に貢献したい」(T2 代表取締役CEOの森本成城氏)
T2が目指すレベル4の自動運転トラックによる物流
T2は高速道路近くの「切り替え拠点」の間を遠隔監視型のレベル4の自動運転でトラックを走らせることで、モーダルコンビネーションを推進する。運送会社や荷主の集約拠点とT2の切り替え拠点の間は有人で運転するが、高速道路の多くの区間を無人化することで労働力不足の解消や労働環境の改善につなげる。
T2は既存の運送事業にはない「自動運転トラックによる運送事業」ならではのポイントとして、切り替え拠点の運営を挙げる。拠点のスタッフの教育や管理が必要になる他、T2の切り替え拠点と荷主の集約拠点の間の有人輸送でのドライバー確保も求められる。ドライバーはT2でまかなうだけでなく、地域の運送会社と協力する可能性があり、その場合はシステム面でも連携が求められる。レベル4の自動運転システムの遠隔監視システムはKDDIなどとともに開発中だ。
切り替え拠点を増やすには用地の確保も課題になる。神奈川県綾瀬市の切り替え拠点は1500m2ほどだが、神戸市の拠点は最終的にオフィスや整備工場なども設けて1.5ヘクタールまで拡大する。整備工場のために広い土地が必要になるという。「有人から無人に、無人から有人に切り替えるだけであればバス停のようなスペースでもいけるかもしれない。高速道路の出入り口付近は十分な土地がないので、出入り口ごとにどんな切り替え拠点のデザインにするかを考えていく」(森本氏)
自動運転に不可欠なセンサー類は自前で整備するが、重整備は外部に委託する可能性も検討している。自動運転トラックに特化した整備工場のモデルが完成すれば、他社の自動運転トラックのメンテナンスも受け入れて、物流業界全体の自動運転トラックの普及に貢献したい考えだ。
モーダルコンビネーションによる次世代物流システムへ
JR貨物とT2は、複数の輸送モードを機動的に組み合わせた次世代物流システムの構築を目指す。省人化やBCP対応、環境への配慮などの要求を満たす。パレット単位の積み合わせ輸送、パレット貨物自動積み替え、駅ナカ/駅チカの物流倉庫(レールゲート)に対応し、積み替えや横持ちのない貨物鉄道システムを実現する。
また、高速道路への接続や自動運転トラックとのモーダルコンビネーションにより、幹線輸送を複線化していく。そこで、隅田川駅や東京貨物ターミナル駅の他、大阪の4つの駅や名古屋、仙台、福岡などの基幹駅が要所になっていく見通しだ。
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