海上自衛隊が取り組む無人化と自律化 UUVとUSVの開発はどうなっているのか:イマドキのフナデジ!(3)(2/3 ページ)
「船」や「港湾施設」を主役として、それらに採用されているデジタル技術にも焦点を当てて展開する本連載。第3回は、海上自衛隊が開発に取り組むUUV(無人潜航艇)とUSV(無人艇)の関連技術を取り上げる。
「政策評価書」で知る海自UUVの性能
防衛装備庁では令和5年度(2023年度)より、水中領域における防衛能力の強化を目的として、「UUV(無人水中航走体)管制技術に関する研究」を開始している。諸外国による海上戦力の近代化と数的拡充が進む中、日本周辺海域においても非対称戦力の確保が急務となっており、水中で運用可能なUUVはその中核を担う。
この研究では、実海面での試験を通じて段階的にUUV関連技術を成熟させる方針がとられており、まずは実運用に供しうる「管制型試験UUV」を取得し、複数の要素技術を検証する。そのための試験機として1型および2型の2種を用意し、それぞれ異なる技術領域に特化して開発する。
1型UUVでは、ソーナー(防衛省/海上自衛隊の用語。一般的にはソナーと呼ぶことが多い)関連技術の確立を主眼とする。パッシブソーナーによって敵艦艇などの音響情報を捉え、目標の捜索、識別、運動解析を実行する技術の獲得を目指している。これにより、視認困難な水中環境下でも持続的な監視活動や状況把握が可能となる。加えて、水中航行において欠かせない障害物回避機能も開発対象としており、海底地形変化の激しい沿岸域や閉鎖性の高い海域でも自律的な航行を目指す。
一方の2型UUVは、位置管制技術の確立を中心に研究を進める。水中では無線通信が困難なため、音響などによる通信技術を用いた位置把握と管制手段の構築が必要だ。ここで開発する機能では、水中通信機能を実装した上でUUVの遠隔管制や航行を制御する。同様に障害物回避機能の導入も進めていく。
研究試作は令和5〜9年度(2023〜2027年度)にかけて段階的に進め、その成果に基づき、1型は令和8〜11年度(2026〜2029年度)、2型は令和8〜10年度(2026〜2028年度)にかけて所内試験を実施する予定だ。研究の各フェーズでは、技術評価部会による中間検証と事後評価を用いた行政事業レビューとの連携によって、進捗状況や政策効果の継続的な把握を図る。
試験環境は、岩国海洋環境試験評価サテライトを活用する他、先行する「長期運用型UUV技術の研究」で得られたオープン規格設計の成果も反映する。これにより、陸上およびシミュレーションによる事前検証を効率的に進めつつ、研究期間およびコストの削減を図ることが可能としている。
なお、この研究開発予算に先立つ平成31年度(令和元年度、2019年度)には、「モジュール化UUVの研究」として42億円の予算を措置している。この研究では、モジュール交換が可能な長期運用型UUVの試作を通じて、警戒監視や海洋観測などの多様な任務に適応可能なUUV技術の確立を目指した。この研究成果が後続の実証研究やシステム開発の基盤となっている。
防衛装備庁と三菱重工業が共同で進めていた長期運用型UUVの開発では、周辺海域における警戒監視と情報収集能力の強化を目的とし、従来のUUVよりも自律性と耐久性を高めているのが特徴だ。船体はモジュール構造を採用しており、頭部とエネルギーモジュール、尾部に加え、任務に応じて追加可能な機器設置モジュールによって構成する。
基本構成の全長は約10mで、追加モジュールを装着すると全長は最大15.6mに達する。船体に大容量電池を搭載して最大7日間の航行が可能だ。想定する主な任務は水中機器の敷設、海洋観測、情報収集、警戒監視などで、重量物の運搬と設置を単独で遂行できる性能を求めている。
併せてソフトウェアもモジュール化しており、INS(慣性航法装置)、ソーナー、各種センサー類、OS、ミドルウェアなどを含む構成機器全体が交換もしくは拡張可能だ。このモジュール方式は将来のUUV開発の共通規格として防衛産業のみならず民間でも適用可能なオープンプラットフォームとして提案することで研究開発の活性化を狙っている。
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