ホウ化水素シートの抗菌や抗ウイルス機能を確認 コロナにも有効:研究開発の最前線
筑波大学は、ホウ素と水素の組成比が1:1のホウ化水素シートが、抗菌や抗ウイルス、抗カビ機能を発揮することを確認した。ホウ化水素シートは、簡便な溶液プロセスにより大量合成が可能なナノシート状の物質だ。
筑波大学は2025年5月9日、ホウ素と水素の組成比が1:1のホウ化水素シートが、抗菌や抗ウイルス、抗カビ機能を発揮することを確認したと発表した。ホウ化水素シートは簡便な溶液プロセスにより大量合成が可能で、水素の貯蔵や輸送、触媒などへの応用が注目されるナノシート状の物質だ。
同大学と東京科学大学、高知工科大学、神奈川県立産業技術総合研究所の共同研究グループは、2.0mgのホウ化水素シートをガラス基材にコーティングした膜部材を作製。コートの膜厚は約2μmで、可視光領域の透過率はほぼ透明の80%以上を示した。
このコート部材に黄色ブドウ球菌と大腸菌をそれぞれ付着させて、一定時間経過後の生菌数を計測したところ、10分以内で検出限界値以下まで減少することが分かった。新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス、ネコカリシウイルスを用いた同様の実験でも、感染力のあるウイルスの数であるウイルス感染価が、10分以内に検出限界値を下回り、抗菌、抗ウイルス機能を有することが明らかとなった。
また、黒麹カビや青カビを付着させた場合は、24時間後に生存カビ胞子数が検出限界値以下となる。これらの実験結果から、ホウ化水素シートが菌やウイルス、カビのいずれに対しても抑制する効果を発揮することが示唆された。
赤外分光法やアルカリホスファターゼを用いた酵素活性試験の解析により、ホウ化水素シートのタンパク質を変性させる特性により、菌やウイルスが不活化したと考えられる。
細胞毒性の検査では、ホウ化水素シートが動物細胞に及ぼす強い毒性は無いとされており、感染リスクを低減できる部材や繊維類などへの透明コーティング材としての活用が見込まれる。研究グループは今後、バインダーなどと複合化したコーティング剤の開発に取り組む考えだ。
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