誰も教えてくれない設計NGあるある【モーター編】:設備設計現場のあるあるトラブルとその解決策(11)(2/3 ページ)
連載「設備設計現場のあるあるトラブルとその解決策」では、設備設計の現場でよくあるトラブル事例などを紹介し、その解決アプローチを解説する。連載第11回はFA業界の主役部品の一つである「モーター」に焦点を当てた、「誰も教えてくれない設計NGあるある【モーター編】」をお届けする。
モーター軸と負荷軸との締結方法に関するNG
モーターは、モーター軸に回転させたい部品(負荷軸)を締結することで機構として機能しますが、その締結方法にはいくつかのパターンがあります。
というのも、モーター軸にはねじ穴などが開いていないことが多いため、負荷軸と接続した際に接続部が抜けたり、回転中に軸が滑ったりしないよう設計することが、機械設計上の重要なポイントとなります。
実際にモーターのカタログを見てみると、モーター軸の形状には「丸形」「キー溝加工」「Dカット加工」といった複数の種類(接続方式)があり、同時に接続する相手部品にもさまざまな接続方式がラインアップされています(場合によっては、設計で対応することもあります)(図3)。
さまざまな接続方法の中でも、比較的「接続部がしっかりと固定される」と認識されているのが、「クランプ締結」(カップリングによく採用される)や「メカロック」を用いる方式です(図4)。
これらの接続方式は、物理的には丸形、キー溝加工、Dカット加工のいずれのモーター軸形状でも接続可能ですが、基本的に丸形モーター軸以外での使用はNGです。
その理由は、クランプ締結やメカロックがどのような原理でモーター軸を固定しているかを知れば理解できます。
クランプ締結やメカロックによる固定は、モーター軸の円筒面に対して均一に摩擦力を作用させて固定する締結方法です。このうち、メカロックでは均一な摩擦力を得るために、全てのボルトの締め付けトルクを管理する必要があるほどです。
ところが、キー溝加工やDカット加工が施されているモーター軸では、円筒面に対して均一に力を作用させることができません。その結果、以下のような不具合が発生するリスクがあります。
- 加工端部付近に応力が集中し、軸が破損する
- 不均一な締め付けにより軸が偏心変形し、振動や回転精度が低下する
クランプ締結やメカロックを用いた軸締結を採用する場合には、モーター軸は丸形を選定するのが望ましいです。逆に、キー溝加工されたモーター軸を使用する場合はキーとキー溝付き部品を、Dカット加工されたモーター軸を使う場合はセットスクリュー(いもねじ)を用いた締結方式とするのが一般的です。
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